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2005.11.26

秋の台湾 其の五

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さて篤実な台湾旅行者なら現地での廟参りは欠かせない行事である。
台北市内でも龍山寺とか行天宮とかいつも賑っている名所の他に、
民家の並びに普通に小振りな廟が建ち並んで居たりする訳だが、
郊外に有る無駄に豪華な廟を観てしまうとそちらの虜に成ってしまったりする。

数々の分院やら回廊やらを登って行くと山頂に鎮座する壮麗な建物が、
正に少林寺三十六房を髣髴とさせる猫空の「指南宮」は別格としても、
老街の街並みもシブイ、三峡の祖師廟も彫刻の凄さに圧倒されるし、
名物な門前の廟口夜市の賑わいも楽しい、基隆の廟も捨て難い。

んで今回はMRTの關渡から少し歩いた所に有る關渡宮に出掛けた。
關渡は淡水河と基隆河が別れる起点の辺りに有る古い街だ。
それだけに創造していた以上に廟の規模が大きくて驚いた。
建物は4階建てくらいの高層に成っていて、そこから眼下に河を見下ろせる。
正面から観た廟の威容も素晴らしいのだが、
こってりとした装飾が群れ為す様が見える高層からの眺めはまた格別。
この空間恐怖症の様に隙間無く極彩色に埋め尽くされた装飾が、
中華民間宗教建築の特色であり、そそられる所である。
神寂びた日本の寺院建築も勿論最高なのだが、やはりこの風土にはこれなのだ。
しかし今や時間の経過と供に落ち着いた雰囲気をまとう日本の寺院も仏像も、
創建当時は眼を被うばかりの原色の派手な色彩に溢れていた訳だから、
或る意味これが正しい姿なのではないかと思ったりもする。

廟の前は非常にのんびりとした河沿いの風景で、
ド派手な物を見せられた眼に優しい、川風も心地好い郊外の様相を見せている。

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この廟の先に行くと最近MRTと連動したサイクリングコースが造られていて、
その先に淡水河を行き来する「藍色公路」と呼ばれる水上バス乗り場が有る。
台北市内の近くまで行けるコースが有ったのだが、生憎と既に終了していた。
しょうがないので淡水まで溯ってMRTで市内に帰る事にしたのだが、
ほんの僅かだったが夕日が名所の淡水で、沈む夕日を見る事が出来た。

この日はもう本当に暑い日で、しかも湿度が高くてウンザリしたのだが、
暑い所は苦手な犬も、日陰で崩れ落ちる様にダウンしていた。
しかし亜熱帯地方の犬って色々とキビシいよなぁ・・・

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2005.11.22

秋の台湾 其の四

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活字中毒者に嬉しい、書店の充実した台湾であるが、
基本的に書店では座り読みが基本だ。

おされなライフスタイルを提唱するハイセンスな品揃えで御馴染みの、
台湾全土に展開する「誠品書店」の店内でもこの通り。

座り込んでいる連中は一応邪魔に成らない様に気を使って座っている。
通路を塞ぐようにいぎたなく座り込んでいると云う訳ではない。
訳ではないが、何にしろ邪魔には違いない、しかも数が多い。
感心するのは老若男女に関らず、親子連れもカップルも皆、座り読みしている。

座り読みだけなら云いのだが、結構ストローの刺さったカップを持っていたりする。
持ってるのならまだ良いが、水滴の付いたそれを平積みの本の上に乗せてたりする。
「ふざけんなよ!」とか言って叩き落としたくなる所だが、
店員は到って何も言わずにきびきび働いていたりする。

まあそんなカルチャー・ギャップに驚かされる本屋では有るが、
座り読みとは云え、それだけ本を読んでいる人間が多いと云うのも事実である。
ガキがコンビニで漫画を座り読みとか言ったら小言の一つでも言いたくなるが、
専門書を座り読みとか云うのなら何となく「よし」としてしまう物である。

一つ笑ったのが、日本探偵小説界が誇る世紀のカルト・ミステリー、
小栗蟲太郎の「黒死館殺人事件」が台湾で翻訳出版されたらしい。
蟲太郎の黒死館と言えば、極限的な衒学趣味が神経症的に炸裂する作品で、
(「どの道、汝真夜中の暗きに摘みし草の臭き液よ<ザウ・ミクスチュア・ラング・
ミッドナイト・ウィーズ・コレクテッド>-でしょうからね」)

等と云う注釈が夥しく付いてくる難解な推理小説だったりするから、
もうページが活字で真っ黒に染まっている様な塩梅で、
つまり地の文字と、ルビのカタカナが全部旧仮名の漢字に翻訳されていて、
更にルビの部分の解説まで添えてあったりするのでもう無茶苦茶な段組なのである。
日本人にした所で完読した人間は少ないと云うシロモノなのに、
企画した奴も無茶なら、翻訳した人間も相当に無茶だ。

読了した台湾人と是非、法水麟太郎の狂いっぷりを語り合いたいもんである。

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2005.11.20

秋の台湾 其の三

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前回に引き続き、今回も廃屋巡りの続きを・・・・

去年のブログにも書いたのだが、毎年必ず訪れる場所の一つに、
鉄路局の裏に当たる鄭州路、別名「牛肉麺街」が有る。
普通に車とか単車が激しく往来する細い道なのだが、
その道の両側に、何故かしら牛肉麺を扱う路店が軒を連ねて居る通りなのだ。

牛肉麺は台湾では何処でも食べれるポピュラーな麺では有るが、
流石に競合する店が軒を連ねる此処は、どこもそれなりの仕事をしている。
大概、大、中、小、と3種類の丼で商いをしているのだが、
麺の内容と供に、盛られている肉の量もかなり半端では無かったりする。
一度軽い気持ちで「大」を注文したのだが、かなり苦労して半分片付けた位だった。

普通に考えれば飯喰ってるすぐ横を、排ガス撒き散らして単車が行く訳で、
正直、衛生的にも健康的にも如何なもんだろうか?と云う感じなのだが、
猥雑さを愛する旅の空の下、等と云う太平楽な状態に居る身には、
そんなシチュエーションも結構気に入っていたりするから不思議である。

「さて今年も牛肉麺と排ガスを味わいに行くか!」
とばかり鉄路局の横を何時もの様に入って行って、ガァーンと打ちのめされた。
牛肉麺屋の有った辺りが策で囲われて、その奥の家が取り壊し始めている。
道の入り口に何件かの店は存続しているのだが、かつての賑わいは何処へやら。
しばらく歩いて行くと、間に合せで造った様な看板がぶら下げられていた。
どうやら道の奥の方に何軒かが緊急避難して営業をしているらしい。
実は此処の一角は日治時代の鉄道局の官舎が有った場所で、
かなりの区画に亘って古い日本家屋が密集した地域なのだ。
そこの路地の奥で「排ガス抜き」の牛肉麺屋が普通に営業していた。
表通りに比べればひっそりと静かな雰囲気で牛肉麺をいただける訳なのだが、
なんか淋しい・・・・

結局この辺の日本家屋も住んでいる人間はまだ居るものの、
かなり朽ち果てて緑に返っている様な家も多いのだ。
下の写真の家などは、屋根が半分落ちていて既にどうにも成らない状態だ。
多分この辺の家も取り壊されて、道が拡張されるなり、別の施設に成るなり、
大都会の常として小奇麗に変貌して行くのだろう。
まとまって有った牛肉麺屋は龍山寺の広場の出店同様に、
清潔なフードコートの様な所に収容されるのかもしれない。

しかし・・・排ガスの入っていない牛肉麺なんて・・・

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2005.11.15

秋の台湾 其の二

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台湾の街を歩いていてまずする事と言えば日本家屋探しだ。

天母辺りの新興住宅街は別にして、
街中で普通に日治時代の日本家屋が見れる台北だが、
流石に時の風雪(雪は降らんけどね)に晒されて、
或いは熱帯植物に侵食されて、次々に朽ち果て消えて行っているのが現状だ。
かつては修理して住み着いていたであろう人達も何処にか消え、
遥か昔の記憶だけを残して南国の土に返って行く日本家屋。
緑の隙間に瓦屋根が見えると、つい足を止めて寄り道してしまう訳だ。

大体、歩ける範囲で廻れる所は廻ったつもりでいたのだが、
ふと入った横道に多くの日本家屋が残されていたりして嬉しくなる。
この日本家屋も中正紀念堂の裏を永康街の方へ歩いている時に見付けた。
玄関に咲く赤い花が南国な感じで眼を引いたので裏へ廻ってみた、
そしたら何の事は無い、廃屋だった。

しかしまだ左程破れてはいない障子と云い、反対にボロボロなカーテンと云い、
たわんだ縁側の床板と云い、何かうず高く積まれていた様な畳の間と云い、
妙に暗鬱で密度の高い不思議な空気の流れている様な廃屋だった。
刻は正に街が夕闇に沈む「かわたれ時」煩いほど聴こえる車やスクーターの騒音が、
不意に静まり返った様な気がしたのは錯覚だったろうか?

しかし見事なまでの廃屋ではないだろうか?
今時、日本でもこんなに見事な日本家屋の廃屋は見れないと思う。
大体訳ありの物件でもない限り、壊されずに残っていると云うのが珍しい。
どの様な日本人が外地の台湾にこんな家を建てて住んでいたのだろう?
どんな思いで日本に引き上げたのか?
そしてその後どんな中国人がここに住んで暮らしたのだろうか?

複雑な歴史に重なる街の履歴に、つい思いを馳せてしまう台北の秋。

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2005.11.13

秋の台湾 其の一

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さて今年も台湾行きの季節がやって参りました。
これからまたしばらく台湾ネタでやり過そうか思っております。

タイトルは秋の台湾な訳ですが、何か今年は物凄く暑かったです。
いくらなんでも例年いい加減、涼しくなったりする頃なんですが、
湿度が高かった、と云うか季節外れの汗をかいた秋の台湾だったりします。

さて今回の1発目は龍山寺の話から。
観光コースとしても御馴染みの龍山寺は常宿から近いので、
いつもお参りする所だったりする訳ですが、
何と今年は驚いた事に、龍山寺の前の広場が完成しちゃってたりしたのです。

十何年前だかに始めて台湾に訪れた頃、
龍山寺の前は不法建築の汚い家が立ち並ぶカオス状の街でした。
出店の奥にバラックが建ち並んでいたりして、
今は林森公園に成った中山北路の貧民街にそっくりな状態でした。
それが林森公園同様、あっちゅう間に立ち退きさせられて、
その場所が塀で囲まれた工事現場に成ったのを観た時には、
少々残念な感じがしたりしたもんです。
しかしこれが林森公園に比べると工事がぜんぜん終らない。
終いには塀の周辺にまた出店のアーケードが出来たりして、
何がなんだか解らないカオス状態に逆戻り、そしてそれが長く続く訳です。
或る意味「龍山寺の前は工事現場」と云う認識のまま十何年経った今年、
その認識を覆すかの様に龍山寺の前がスカーンと開けているのです。
いや~もう驚いたのなんのってあーた。

で、そこに何が出来たのかと云えば、まあ広場な訳ですが、
音に合わせて変化する噴水の池がメインに「でーん」と有りまして、
その地下に立ち退かされた出店が収まった地下街が地下2階まで有って、
MRTの「龍山寺駅」と繋がっていたりする訳ですな。

で、まあ写真はその噴水を眺める民衆を後ろの龍山寺と収めた所なんですが、
正直、この位の施設に何で十何年も掛ったのか良く解りません。
日本のゼネコンなら多分半年位でちゃっちゃと造る様な物だったりします。
まあ行政だの何だの色々有ったんでしょうが、
「なんだかなぁ~」と阿藤海の様な科白の一つも出る広場でした。

ちなみに夜に成ると早速、家の無い人達が広場に集まって、
蒸し暑い夜を涼しく過ごしていたりします。
「なんだかなぁ~」

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2005.11.05

シガリロの味わい

ここの所シガリロ(葉巻のリーズナブルな奴)を買って来て
たまに家で吸っていたりするのだが、  
葉巻と同サイズのシガリロ「SwisherSweet」に苺フレーヴァーが有るのを発見。
以前チョコ・フレーヴァーは見た事有ったのだが話の種に買って来た。

葉巻同様一本ずつシュリンクされているのだが開けた瞬間、強烈に甘い臭いがする。
苺シロップと云うか、安っすい人口甘味料的な匂いだ。
少々不安を覚えたが火を付けてみると煙の匂いはそれほどでもない。
しかし吸い込むと確かに苺のあの味がするので驚く。
シガリロなんつうヘヴィな嗜好品に、何でまたこんな甘い味付けをするのか?
煙として吸い込む甘い味ってどう云う事なんだ?等と疑問は尽きない。
まあこの前吸ってた同様の葉巻サイズの奴でカナダ産の、
「PomPomOpera」なんかに比べると物珍しいし「それ」な感じも出ると云うものだが。

今まで吸った中では廉価なベルギー産の「ネオス」社の物が多いが、
中でも「Exotic」が一番味と云い香りと云い好みに合った感じだ。
「ネオス」の物はパッケージが中々洒落た物が多くて、
「Neos Mini」は高級そうなケースに入っているが匂いが余り好きではなかった。
「Cappiccino」はその名の通りカプチーノ・フレーヴァーのシガリロだが、
逆にこちらは匂いは良いが味が余り好きでは無い。
オランダ産の「Cubero Sweet」はキャラメル・モカ・フレーヴァーで、
吸い込むとバニラの味わいがするので女性に受けそうなシガリロである。
ドイツ産の「Al Capone Pokets」はサイズは小さいが好きな味わいだ。
さすがに高級品のミニサイズ物だけあってなかなかの物である。
この辺は日本の紙巻煙草と同程度の値段なので気軽に吸えるが、
シガリロと云うものの、やはりキューバ産の奴などは良い値段がする。
カストロが銜えている事でも御馴染みの「Cohiba」にもミニサイズが有るが、
そうそう気軽に手に取れる値段じゃなかったりする。
まあその内機会が有れば是非ともハバナ葉使用のシガリロにも挑戦してみたい。

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2005.11.01

ワイルド・キッド(野孩子)/大頭春

「ワイルド・キッド」は久し振りに出版された台湾の現代小説だ。 

韓流に替わるムーブメントととして、「流星花園」でブレイクしたF4を軸に、
中華圏で制作されたTV番組を「華流」として売り込む昨今の流れに乗って、
この本の帯にも「時代は韓流から華流へ!」等と掲げられている。
まあどう云う売り方にしろ、この手の本が日本で出る事を素直に喜びたい。
この御時世そう云う事でもなければ、センセーショナルな内容の大陸の作家以外の、
中華圏の作家の本が読める機会は非常に稀だと言えるから。

話の大枠としては、黒社会に足を突っ込み掛ける少年の青春小説と云う、
「やっぱりそれか!」的な内容の本だといえる。
黒社会が社会に抜き差し難く根付いているのは承知の事だが、
実際東京の学生なんぞと変わらぬ何の劇的な事も無い、
普通の生活を送っている連中の方がむしろ多い筈だ。
確かにそう云う事件の無い日常の話はセールスし難いのは解るのだが、
日本に紹介されるのは何かと黒社会絡みの内容が多い様な気がするのだ。
「残酷な青春小説」
これって余りにもパターンなんじゃないだろうか?
等と思いつつ読み始めたのだが、少々話の質感の違いに引き込まれた。

あらすじを紹介すれば多分本当にベタな内容に思えるのだが、
何処と無くそらとぼけた人物設定と妙に老成した醒めた語り口が、
恰も寓話的と云うか、生々しくない距離感で話をつむいで行く。
近年国内以外でも村上春樹の作品は読まれているが、
香港、台湾等では早くから翻訳され非常に高い人気を誇っている。
本書の紹介文に「台湾の村上春樹」と良く聞く紹介のされ方をされていたが、
確かに村上春樹を意識したと言える様な文体だ。
短いセンテンスで、少々唐突と思える様なエピソードを、
他人事の様なモノローグで綴ってゆく感じは正にそう感じる部分だ。
勿論そこまでベタでは無く、作者なりに咀嚼された文体に成っているし、
「タンキー」(と云うか見鬼か?)等のエピソードの挿入も良い効果を出している。
同じく村上春樹に影響を受けた、モノローグ中心に話を進めて行く、
王家衛辺りにスタイリッシュに撮らせたら面白いんじゃないだろうか?
「蛋白質女孩」なんかを映画化するよりよっぽど有っていると思うがな・・・・

訳者の後書きを読んで知ったのだが、この作者の作品を以前読んだ事が有る。
国書刊行会の「新しい台湾の文学」シリーズ中の「台北ストーリー」に収録された、
張大春名義の「将軍の記念碑」と云う作品だ。
所がこちらはまたガチガチに文学的と云うか実験的な内容の作品だった。
1986年の作品と云う事だから、彼の根幹は文学的な作家なのかもしれない。
他にも色々な傾向の作品(武侠小説も有るそうだ!)も手掛けているらしく、
たったの2作品を読んだだけだがその多彩さは伺える。
大頭春名義の前2作品も中々面白そうな内容で是非続刊を期待したい所だ。

ついでにリクエストと云うか「華流」絡みで、現地のTVドラマの原作になる様な、
日本で云う所のライト・ノヴェルの如きな本が現地で数多く出版されている。
文学も良いのだが大衆小説こそがその時の文化を映す鏡だと思うので、
是非その辺も翻訳して欲しい物だ。
むしろ「華流」を標榜するのならそちらの方を出版した方が良いのでは?と思う。

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