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2007.05.28

「龍虎門~ドラゴン・タイガー・ゲート」

Dragontigergate


ようやく公開されたマニア待望の「龍虎門-ドラゴン・タイガー・ゲート」。
頭に「かちこみ」とか云うどうでも良い邦題が付けられてたりする。
今回は最近のパターンとして「字幕版」と「吹き替え版」の2本が公開されたが、
吹き替え版にはどう見ても関係無さげなアン・ガールズが吹き替えをやっていたり、
イメージソングとか云う括りで、気志團の「OneNightCarnival」が使われたそうだ。
・・・しかしヤンキー唄と何のイメージの係りも無いと思うがなぁ・・・
まあそれにより公開劇場の数が増えるのは悪い事では無いけど。

この作品、現地の奴なら問答無用に著名な漫画の映画化と云うのは有名だが、
香港に行き始めた90年代の初頭に、現地で購入した事が有る。
香港の漫画は所謂アメコミ同様のプロダクト方式で作られていて、
一人の作家が殆ど総てを手掛ける日本と違い、
原作・脚本・線画・着色・効果・などを専門職が分業して作られている。
刊行形式もアメコミ同様の薄っぺらいB5版の冊子にて週間で売られる。
なので、たかだか1週分の冊子を買った所で話の内容は全く不明だったし、
当時はその漫画がどの位の歴史が有るか等解り様も無かった。
最初期の「龍虎門」の表紙を香港漫画のクロニクル本で見た事が有るが、
「コロコロ・コミック」辺りに載ってそうなギャグ漫画風な絵で、
書いている人間が代っているとは云え、余りの作風の違いに驚いた。
まあ香港のコミック事情を書いているとキリが無いが、
それだけの有名作品なだけに、現地と日本での受け止められ方は全く違うだろう。
と云う訳で飽くまで映画としての「龍虎門」を観て行きたい。

やはり最初に感じるのは上映時間の短さだろうか?
いや香港映画なら決して短いと云う訳では無いのだが、
別に2時間くらい有っても良かったんじゃなかろうか?と思う短さだった。
と云うのも中心と成る三人のキャラを起たせるまで描かれていない気がするのだ。
やはりこれは原作を知っている側には必要無いと感じた部分なんだろうか?
甄子丹扮する王小龍は当然主役なだけに一番見せ場も多い役なのだが、
世話に成った「江湖」を脱け「龍虎門」に戻ろうとする動機が余り見えて来ないし、
その希薄さ故に葛藤する部分がこちらに迫って来ない感じがするのだ。
謝霆鋒扮する王小虎は登場シーンこそ華々しく印象的だがその後が続かない。
その後は強さより甘さが際立ってしまう所が非常に残念だ。
三人の中では多分、余文樂扮する石黑龍が一番人間的な部分を描かれていた。
生意気な態度を「龍虎門」に入門する時点で打ち砕かれたお陰で、
飄々とした中に宿る熱さと優しさが表出した感じで非常に良く描かれていたと思う。
そんな訳でもう少し王兄弟の心の襞が描かれていても良かった様に感じる。

まあ同様の事はそれぞれのヒロインたちにも言える事で、
総体的にキャラを描き切れて居ない、もしくは描き切る時間が無かった様に感じる。
それは多分日本人の我々が良く知った漫画原作の映画を観る時に感じるが如く、
原作を上手くトレース出来てるか否か?ばかりに視点が行ってしまって、
そもそものキャラの性質を二の次に考えてしまうのと同様の事なんだろう。
やはり原作を知らない人間には、その辺がネックと成ってしまう。

アクションに関しては流石に甄子丹!と言えるハイクラスな出来だった。
甄子丹に関してはもはや言う事無しの美技と気迫に圧倒されるが、
今回感心させられるのはやはり謝霆鋒と余文樂のがんばりだろう。
なにせ原作では「龍虎三皇」と称される武術の達人たちを演じる訳で、
現地のファンが求めて来るレベルもかなり高い物が予想される訳だが、
爽やかなルックスと供にかなり高度なアクションを見せてくれたと思う。
始まってすぐの海上レストランで披露される打点の高い謝霆鋒の足技、
巻き込まれた日本料理屋で炸裂する余文樂のけれん味有るヌンチャク技など、
アクションに掛ける若手の並々ならぬ意気込みと心意気にグッと来る。
なので最終決戦以前に、彼らの瑞々しいファイトをもう少し観たかった所だ。

さてハイライトと成る最後の火雲邪神との戦闘シーンに関してなのだが、
アクション的にはCGを使った凄い物なのだが、映画的にはやや不満が残る。
火雲邪神を演じているユー・カンは甄子丹のチームの1員で、
アクションの質とか甄子丹との相性なども文句無い人なのだが、
なんせ火雲邪神と云う存在がこの映画の中では異常に曖昧な存在であり、
その仮面のせいも有るのだろうが、単に強い敵の象徴と云う風にしか見えて来ない。
なので最終決戦に於ける死闘のカタルシスが著しく減じている気がするのだ。
現地の人気漫画の映画化と云う事で、当然制作側も意識していた事だろうが、
郭富城と鄭伊健の主演による名作「風雲~ストーム・ライダー」が前に有る。
「少林サッカー」に先立つ、映画CGに於ける漫画表現を確立した傑作だが、
あの作品が傑作足る所以の一つに最終決戦の相手が千葉真一だった事が挙げられる。
造形的に似ていたと云うのも有るが、あの作品での千葉真一は圧倒的だった。
あの千葉の存在感がCGに溢れる漫画世界を映画に繋ぎ止めていた楔だったと思う。
残念ながらこの映画に欠けているのはそう云う存在感なのではないかと思った。

あと個人的に残念だったのが、最近多くなって来た大陸の女優の起用だ。
馬小靈を演じた董潔も羅刹女を演じた李小冉も、当然悪い訳では更々無いが、
やはり出番が少なくなっているだけに香港の女優に出番を与えて欲しかった。
「龍虎門」の師匠である王降龍を演じるのは最近格の上がった元華だ!
まあ元華の経歴とテクニックを考えれば別に何ら違和感が有る訳では無いが、
「功夫」からこの方、馬鹿作品への出演ばかりを見ているので少し微妙な感じが。
でもって映画を観終わった後に指摘されて驚いた事が、
「江湖」の馬坤役が、かのショウ・ブラザースの武打星・陳觀泰だったと云う事。
流石に「功夫」の梁小龍(ブルース・リャン)に比べれば現役感は強いので、
滅茶苦茶驚いたと云う訳ではないが、そこに甄子丹の心意気を見る思いがした。

最後に、主役3人のレトロ・ポップな衣装が中々カッコいいのだが、
これは王家衛映画でお馴染みの張叔平が「形象顧問」として手掛けていた様だ。
特に袖無しGジャンにボロボロのセーターを組み合わせた石黑龍の衣装が最高だ。
しかし話の設定が微妙に現代・・・と云うか近未来と云うか謎な感じで、
別にそこにレトロな衣装をまとわせる事なかったのではないか?と思うのだが・・・
まあその辺のトータル・コーディネイトの緩さも香港映画らしい所では有る。

話では「龍虎門2」の制作も決まったらしい。
甄子丹以外のキャストはまだ未定だがどんな規模に成る事やら・・・
原作は長大に続いているだけに続編のネタにも困らないだろう。
やや不満の残った一作目で有るが、人気シリーズとして続けば面白く成りそうだ。
是非とも石黑龍が活躍するスピンアウト・シリーズなんかも企画して欲しい。

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