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2007.05.07

仮面ライダー響鬼の事情

Hibikibook01

納得の行かない終り方をしたあの番組に対する決着を皆何処かで付けたがっている。

それは一視聴者から制作者まで共通した思いの様だ。
この本の著者は係った創成期の頃を書き記して決着を付け様としている。
自分もその一人として当然この本を手に取り、再びあの番組の事を考える。

いやぁ~面白い本が出たもんである。
こう云う本が出る事自体番組の持っていたポテンシャルの現われと云う事だろうか?
著者の片岡力氏は「文芸協力」とクレジットされる位置に居た人で、
番組のプロデューサーである東映の高寺氏に乞われて参入した、
番組立ち上げから放映開始寸前まで参加していた外部のライターだった人である。
5作まで続いた平成ライダーシリーズに変わる新しい番組のブレインとして、
従来の路線を踏襲する事無く、新しい方向を模索した「完全新生」を掲げて、
話は「変身忍者・嵐」のリメイクと云う方向から始まる事に成る。

番組終了直後に出た響鬼スーツの写真集「魂」の末尾のページに、
高寺Pやデザインチームの談話による番組の創成期が語られていたので、
大まかな流れとしての制作秘話的な事は了解していた。
しかしかなりな量の没プロットや内部資料で窺い知る制作の裏側は凄まじい。
ここに出て来るプロットの幾つかは詰めて行けば普通に面白そうな話に成りそうで、
勿論番組としては不可能で有っても漫画やアニメなら通りそうな企画が多い。
「変身忍者・嵐」のリメイク案は是非何かに使って欲しいくらいだ。
しかしそんな甘い素人の助平心がプロの世界で安々通る訳は無く、
様々な要素で企画自体が変転して行く所がこの世界の難しさだったりする。

しかしヒーロー番組である事の難しさと云うのは想像を絶する物がある。
新たな案が出される度に乗り越えるハードルの高さに、
読んでいてもウンザリさせられる所が多い。
例えばスポンサーである所の玩具会社の玩具展開に於ける問題の数々。
番組のタイトルや細かい設定が決まっていない状態で玩具製造上の様々な工程の為、
早い段階で主力と成る変身玩具や武器の事を決定しなければいけないらしく、
毎年こんな綱渡りの様な事をしているのだと思うと空恐ろしくなる。

何処の世界でも業界の裏側は人知れぬ苦労が絶えないとは思うが、
「子供番組だからお手軽」ではなく「子供番組だから更に大変」と云う事は、
もう少し知られても良い事実なのではないかと思う。
人気俳優のスケジュールを押えたら、後は人気漫画の原作をアレンジして・・・・
と云う風な昨今のドラマと比べても劣る所など一つもないのだから。

番組の設定を詰めて行く前半の部分は「3歩進んで2歩下がる」状態で、
読んでいても中々に重苦しい感じがするのは確かなのだが、
見慣れた設定が数々現れようやく番組が形に成って行く後半は読んでいても楽しい。
屋久島で決まるOP、お馴染みな鬼達のコードネーム、細川茂樹の登板、
各キャストのオーディション風景、そして長瀞での媒体撮影と駆け足に進む。
しかしその晴れやかな舞台が著者の最後の仕事に成ると云う皮肉に、
著者の無念さが際立つと云う感じだ。
それ故に放映後の1、2話を見た著者の意見などは中々興味深く読めた。
響鬼のプロフェッショナルな部分を強調して欲しかった著者は、
1、2話での響鬼の行動に賛同する部分と違和感の部分を持っていた様なのだが、
そう言われた部分を改めて見返しても個人的に余り印象は変わらなかったりする。
放映された内容が総てな一視聴者として、観て来た物を信じるしか無い訳だが、
こうして「有ったかも知れない姿」を知る人の意見を拝見出来るのは楽しい。
叶わぬ願いで有るだろうが、やはりこうなったら高寺氏の書いた物も読んでみたい。
まあ実現出来たとしても何十年後かに「過去の仕事を振り返る」と云う、
回顧録的なスタイルの本しか出来ないだろうから、本書の様な「熱」は無いだろう。
そう云う点で制作者・視聴者の記憶も新しい「今」この本を著した意義は深い。
しかし現在(多分)最後の響鬼本であろう編集中の東雅夫氏の「響鬼探求本」だが、
こう云う本が出た事でまた内容の変更迫られるのでは無いだろうか・・・・

さて本書のタイトルを聞いた時点でファンはある種の事に思い至る筈だ。
そう、それは番組途中での高寺Pの降板とその後の展開についての事。
冒頭の「はじめに」でその事に着いて本書は触れていない旨を述べているが、
営業上そう云う臭いを何気に漂わせているのは隠し様が無いと思う。
勿論、一読者として事実を知りたいと思うのは確かな事なのだが、
例え高寺Pが係り続けていたとしても、内容の変遷は有ったであろう事は、
極端に二転三転して行く放映前の内実から窺い知れる。
(だからと言って後半あそこまで腰砕けな物に成ったとは思わないが)

著者は番組開始直前までしか係っていなかったから、
実際に検討されていたであろう後半の展開がどうだったのかは書かれていないが、
明日夢少年が響鬼に弟子入りしないと云う展開のまま、
納得の行く結末が迎えられたかどうかは、結構疑問視する様な部分だし、
本編の方でも非常にうやむやに処理されていた魔化魍側の仕組など、
高寺Pが係っていたとしても龍頭蛇尾的な結末に終りそうな要因は多い。
自分も含めて、不本意な要素で番組が改編された事で、
見る事の無かった本来の結末に幻想を抱いている部分が有るのは確かだ。
まあ無論あのまま奇跡的な結末が待っていた可能性も有る訳で、
多分その幻想はこのまま萎んだり膨らんだりを繰り返し続けるのだろう。
そう云う意味では最強のメタ・フィクショナルな特撮番組に成ったと云えるだろう、
高寺氏が決着を付けるまでは・・・・

結果的に不本意な形で「完全新生」の夢は挫折し、
現在も何変わる事無く「仮面ライダー」シリーズは続けられている訳だが、
その試みは間違いなくスタッフの心に生き続けていると思える。
響鬼の次作こそ、完全にセオリー通りな平成ライダーである「カブト」だったが、
(イケメン揃い、メタリックな外観、ライダー同士の闘い等、余りに従来通り)
今作の「電王」などは完全にこれまでのライダーとは違う質感の作品だ。
勿論、響鬼に比べればマスクの造型(左程意味は無いが)バイクに跨る所など、
極端にライダーのイメージを損なってはいないが、
敵側であるイマジンの力を受けて闘う「デビルマン」方式なところとか、
俄かに信じられなかった電車を取り入れた話などかなり異質な設定である。
そんな「電王」の設定の成立要因には間違いなく響鬼の経験が生かされている筈だ。
それは最初から躊躇無きまでにクライマックスな飛ばしまくりの内容と、
それでも従来のファンを取り込んでいける要素や設定のバランス感覚に表れている。
いつもなら多く聞かれる「これがライダーなのか?」と云う声より、
開始直後からの圧倒的な賛同の声に視聴者の「新生」への期待も伺える感じだ。
勿論まだまだ話は序盤な訳でこれからどう変化して行くのかは解らないが、
響鬼での経験則を生かした製作者側のしたたかな「新生」への思いを信じたい。

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