仮面ライダー電王の戯画化的な世界
電王の「劇場版」は、他のブログでも中身の濃い感想が多くアップされていて、
ここで今更似た様な感想を出す事も有るまいと、
記事の頭に「電王孝」的な物を載せて御茶でも濁しておくか?とか考えていた。
しかしこれが書き始めてみると何だかんだと長文に成ってしまい、
これはイカンと、感想と論考は別けてアップする事にした。
以下が劇場版の頭に付け様と思っていた、まあ例によって「繰言」である。
「電王」とお題が振られて最初に出て来るのは言葉は、
「仮面ライダーなのに電車とはこれ如何に?」と云う奴に決まっている。
去年の年末から新年に掛けて新作の情報がネットに洩れて来た頃を思い出す。
「来年のライダーは電車乗ってやって来るらしい」「電車通勤か!」とか、
今で云う所のソード・フォームのラフ画が流れて来て、
「何じゃ?あの桃割れ頭は!」「顔にケツが有る!」とか散々な状態だった。
そう云う意味では放映前の「響鬼」と似ている様な状況だったと言える。
「平成ライダー」のセオリーに忠実だった前作の「カブト」と比べると、
ベクトル的には明らかに「響鬼」同様、定番から離れようとする作品で、
それは一話放映後にガラッと番組に対する論調が変わった所も同様だった。
勿論ベクトル的には同じでも話の描き方は明らかに隔絶していて、
或る意味「リアル」で有る為に細かく織り成された設定と、
「少年とヒーロー」と云う複合的な視点が大人を惹き付けた「響鬼」に対して、
「電王」は漫画的ともアニメ的とも云える所謂「戯画化」的な描き方に、
何ら躊躇無く挑んだ作品だと言える。
同時間に放映している戦隊物がより低年齢向けに「戯画化」的なのに対し、
差異化の意味でも従来のライダーは大人も視野に入れた設定に成っていた。
所が「電王」は中心に成るドラマは細かく丁寧に作り込んでいながら、
戯画化している部分は開き直って完全に漫画として描き切っている。
例えば前述のソード・フォームの仮面に対する「桃割れぢゃん!」と云う部分など、
実際に桃が頭の線路を流れて来てパカッと割れて仮面になる、
何故ならソード・フォームに成るのはモモタロスが憑依したからだ!
何と云うストレート極まりない論理!四の五の言ってる奴の方が馬鹿を見る。
最近テレビの方で登場した強化形態の「クライマックス・フォーム」も、
ネットに画像が洩れて来た時には「桃が剥けてんのかよ!」散々言われたりした。
所が番組中で強化形態に変形中に当の電王が「うわ、気持ち悪ぃ!」と絶叫で、
仕上げに「むっ剥けたぁ?」と来る訳で、劇中でそれ言われたらもう敵いません。
お約束に対して劇中で突っ込みが入ると云うのは相当漫画的だと言える。
そんな「電王」の漫画的な部分を担当するが主人公に憑依する4匹のイマジン達。
この連中の特異な存在が劇中の戯画化をほぼ一手に担っている。
番組を観ている皆さんには今更だが簡単に説明すると、
赤:モモタロス/特徴:粗暴犯/何よりも喧嘩好きで揉め事には必ず首を突っ込む。
口も態度も人相も悪いが、根は人情に脆い単純で良い奴。
カッコ良い行動がモットーだが、ウンコ座りが最高に似合うヤンキー体質。
青:ウラタロス/特徴:知能犯/己の話術で他人を騙す事に生甲斐を感じる詐欺師。
女は大概口説くし寸借詐欺もお手の物だが、他人との調和を図れる大人でも有る。
レギュラーの中で唯一頭を使えるが、熱い事は性に合わないクールな奴。
金:キンタロス/特徴:強力犯/男は強くてナンボの寡黙な体育会系。
ナルコレプシーかと思うほど常に寝ているが、思い込みの激しさ故なトラブル多し、
単純で直情径行で論理は独特だが、基本的に一番善人ではある。
紫:リュウタロス/特徴:愉快犯/人の話を殆ど聞かない唯我独尊タイプ。
当初「切れる十代」と言われていたが、正直行動や言動は幼児並である。
制御不能に暴れたりするが、小動物や美人が好きな甘ったれの末っ子。
基本的にこいつらは味方だがライダーで云う所の「怪人」である。
基本的に怪人なので所謂「傍若無人」で「自分勝手」である。
それぞれ激しく個性的で妙に人間臭く、それでいて憎めなかったりする。
また各イマジンにはキャラに合わせた「決め台詞」が用意されいて、
台詞一つでそのキャラを認識させる、所謂「キャラ起ち」の助けに成っている。
こう云う「決め台詞」は特撮番組や時代劇には良く有る設定だが、
近年ここまで充実した、しかもキャラも豊富に大量な「決め台詞」稀だろう。
誰かがその台詞を口に出す時、それは最も簡単な「コスプレ」の瞬間と成る。
各人が見事に起ち上がって来る設定やキャラを把握した脚本も見事だが、
それにも増して見事なのが中々複雑なキャラの作られ方にもよる。
着ぐるみ、と云うかスーツを着て演技する事に特化したスーツアクターたちが、
絶妙な表現で脚本を膨らませ、競い合う様に演技にアドリブを加え、
その上で熟練した声優たちが表情豊かに更なるアドリブを加えるのだ。
プロによる相乗効果でイマジン達が展開する場面は画面の密度が特に高く、
番組内でも特に人気の高い部分であり、それにより現場の悪ノリが凄い。
一度流して観ただけでは情報量の多さが伝わらず、繰り返して何度も観てしまう。
そう云う所は、話に関係無い小ネタを散りばめてカルトな人気を得た、
「TRICK」や「時効警察」「セクシーボイス&ロボ」に近い物がある。
(余談だが声優達の貢献大なイマジンの漫画的なまでの活躍を見ていると、
昨年放送していた特撮番組「セイザーX」のブレアードら三馬鹿大将を思い出す。
あれも後半声優達の悪ノリでぐんぐんとキャラ人気を打ち立てていったが、
制作サイドはその辺意識した部分は有るんだろうか?)
またそう云うキャラ起ちした濃さが、アニメ的なキャラ展開とでも云うべき、
通常のライダー商品の展開と少々違うキャラ商品の人気へと繋がっている。
その際たる物が番組の主題歌でも無いのに、特撮番組としては驚異的な、
オリコンチャート初登場6位を記録した「Perfect Action」だろう。
各フォームの戦闘時に流れる曲を主役と各イマジン声優が歌った内容な訳だが、
劇中のイマジンのセリフが加えられた各バージョンも収録されていたりして、
これがイマジン人気でなければ何なんだ?と云う商品である。
勿論今までもライダー関係のキャラソングは存在していた訳なのだが、
やはり声で喰っている声優が加わった仕事は実に聴き応えがあるし楽しめるのだ。
人気声優の出演で所謂「声優誌」等でも電王は頻繁に取り上げられている。
それ以外にもデフォルメされたマスコット商品やお馴染みのソフビ人形、
はてはステーショナリー関係(自由帳とか下敷きとか)も発売されるそうで、
正しく今までに無かった「アニメ的」な展開を見せている訳だ。
「アニメ的」と言えば、これまでのライダーでは考えられなかった事だが、
劇場版の公開に合わせて「クレヨンしんちゃん」とコラボしたのには驚いた。
「電王」世界を完全に「クレしん」の画で描き切っていて、
しんのすけと絡むモモちゃんが何ら違和感を抱かせなかった事からして凄い。
他にも「ケロロ軍曹」「らき☆すた」「銀玉」等に電王ネタが見られたそうで、
アニメ業界との異常な親和性が確認出来る。
戯画化は当然、主要な登場人物たちにも顕著である。
「運の悪い少年」と一言で切られる主人公の運の悪さは殆どコント並である。
ふにゃふにゃした言動になよなよした走り方でおまけによく気絶する。
しかし意外に強い意志を持ち、懐の深さも見せると云う描写が上手い。
それもこれも春まで高校生だった、良太郎を演じる佐藤健の演技力の賜物だ。
良太郎がイマジンに憑依されると、スタイルと性格が激変する訳だが、
そんな漫画な設定を巧みに演じ別ける彼の力量は相当な物である。
勿論メイクやスタイルそして声優のボイス・オーバーでかなり助けられては居るが、
劇場版で加わったジークを加えて、素の良太郎と六人格分を演じて別けているのだ。
番組に於ける彼の貢献度は従来の比では無い素晴らしさである。
二人目のライダーとして現れた侑斗は「響鬼」で京介を演じた中村優一君である。
本人はインタビューとか読むと素直な好青年と云う感じなのだが、
制作サイド交代時に憎まれ役として「響鬼」に加わったお陰で、
29話までのファンの憎しみを一身に買ってしまった不幸な存在であった。
今回も正直、響鬼の京介と殆ど変わりが無い設定の憎まれ役だったりするのだが、
侑斗に憑いているイマジン、デネブのお陰で非常に印象が良く成っている。
母親の様に甲斐甲斐しく侑斗を案じて面倒を見るデネブの存在が、
アッパーな良太郎のイマジン達と好対比に成っていて、これまた素晴らしい。
デネブもまたスーツアクターと声優のコンビネーションで繰り出される、
細か過ぎる小ネタの数々が多くのファンを引きつけている。
デンライナーのオーナーを演じる石丸謙二郎は既に存在自体がイマジン同様漫画だ。
「クレしん」コラボで見せた「世界の車窓から」パロなどの怪演は流石の貫禄。
勿論肝心な「萌え」要素である女の子達の存在も充実している。
ハナ/属性:ツンデレ(いやデレは無いか)/名実供に最強のライダー・ヒロイン。
拳一つで粗暴なイマジンどもを仕切るデンライナーの裏番長。
敵イマジンが現れた時も、真っ先に良太郎を後ろにかばう男気の強さも最高。
とは云え外出時はファッショナブルだし、結構情に脆い所もポイント高し。
ナヲミ/属性:天然/余り客席乗務員と云う仕事をして無さそうな極楽とんぼ。
基本的にイマジン連中を煽ったり後ろで囃したり尻馬に乗って騒いでいる事が多い。
色々と謎は有りそうだが余り気に成らない、しかし居ないと結構淋しいタイプ。
愛里/属性:淫靡/ナヲミ同様天然の人だが、天然故に何処か淫靡な感じのひと。
多分コーヒーに良い仕事させる事と良太郎の事以外は余り眼中に無さそうだが、
色々と過去が複雑そうで、今後話の根幹に関って来そうな兆しあり。
強気、天然、年上と各方面に有効な女子キャラの皆さんだが、
もし今後白鳥嬢の不在が長引くと新キャラの増員が有るかも知れない。
その場合は多分、小悪魔なロリ系でモモちゃん辺りが手玉に取られるとか・・・
9月にはナヲミと愛里のコーヒー娘二人による、「ダブル・アクション」の姉妹編、
「Double-Action Coffee Form」等と云う物凄い企画モノが登場する。
こう云うキャラ起ちした企画がまかり通るのなら、
オーナーとナヲミで「Double-Action 時の電車の車窓から Form」とか、
ハナVSモモタロスで「Double-Action 因縁のBattle Form」とか、
尾崎VS三浦とか幾らでもネタが浮かんで来そうな所が楽しい。
近頃放映されているドラマでも、漫画を原作にした戯画化した作品が増えている。
勿論、漫画を原作化した作品は昔から多く有ったが、
表現が極端に漫画そのままと云うか、漫画的で有る事に衒いの無い作品と云う事だ。
ヒットした「のだめカンタービレ」然り「花より男子」然り、
特撮出身者が多く出演する所に因縁を感じる「花ざかりの君たちへ」などなど。
成功しているかどうかは個人的な感想にも拠るだろうが、
かれこれ20年くらい続いていた日本のドラマに顕著な、
スモールサークル内の関係性や感情に終始した、閉じた感じのドラマではなく、
起伏の有るストーリー性で楽しませる話が増えて来たのは良い事だ。
日本のドラマに欠けていた、ベタなまでのダイナミックなドラマ性を追求した事で、
韓国のドラマが日本でも受けた事も、それと無縁では無いと思う。
もう職種や設定を変えただけの同じ様にまったりとしたドラマとか、
「演技に見えない演技」とか云う矛盾した事を売りにする役者はどうでも良い。
例え漫画的だの戯画化的だの言われようと、子供も大人も同じ様に、
血沸き肉躍る展開に笑い泣く様な、そんなドラマがいま観たいのだから。
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