「ビー・バップ・デラックス」祝!再発
以前「モダーン・ポップな紙ジャケ」の時に是非とお願いしていたのだが、
この度ようやく、愛しの「ビー・バップ・デラックス」の紙ジャケが出た!
91年に日本で初CD化した時は4、5作目しかCD化されなかったのだが、
今回はライブ盤を含めて総ての作品がCD化されたのが嬉しい。
このバンドは1作目を除いて一応固定メンバーで固められているのだが、
基本的にリーダーのビル・ネルソンのワンマン・バンドと言って間違い無い。
ビル・ネルソンと言えば一部の音楽ファンにとって後々、
YMOやデヴット・シルビアンなどのツアー・ギタリストとしても知られているし、
現代音楽家のハロルド・バットなどとの共演で何度か来日もしている人である。
現在ではそう云ったギターを使った現代音楽的なアプローチの作品と、
ビー・バップ・デラックスに通じるポップな作風の作品を交互にリリースしている。
そんなネルソンが世に出るきっかけと成ったのがこのバンドなのだが、
後に通じる音楽性の多彩さが見事に各作品に共通していて面白い。
音楽性に節操が無いと言ってしまえばそれまでなのだが、
音は変われど小技の効いた捻くれた感覚は実に英国人気質を感じさせる物だし、
そんな所も含めて実にかのクイーン辺りと共通する物が有って大好きだ。
さて「ギミックが有ってこその紙ジャケ」的な人間に言わせて貰うと、
今回のビー・バップ・デラックスの六種類の紙ジャケは余り面白味は無い。
インナースリーブや付属EPの袋が附くなど細かい仕様は有るのだが、
1作目を抜かせば殆どがシングル・ジャケで余り有難味は無かったりする。
まあビー・バップ・デラックスが日本盤で全種入手可能と云うのが良い事な訳で、
今回はひたすら楽曲の方の紹介に徹しようと思う。
1枚目の「美しき生贄」はワイルドなジャケの割にとにかく音がおとなしい。
イメージ的にはジャケ裏のソフトフォーカスで撮られたお化粧姿に近い感じだ。
グラム・ロック的なサウンドと云う事で語られる事が多い作品だが、
バブルガム的なグラムではなく、初期のボウイの如き耽美さが際立つ作品だ。
耽美なのに煌びやかさより、フォーキーな長閑さを感じさせるのはナニだが、
シングル曲の「ジェット・シルヴァー」はメロディの良さが際立つ良曲だし、
後にライブでも演奏され続ける「ヨークシャーの風景」は小技の効いたインストだ。
2枚目の「フュチラマ」は個人的に彼らの最高傑作で捨て曲無しの名盤だ。
前作の長閑なスカスカさは何処にも無く、過剰にハードでメロディアスである。
今作のプロデュースはクイーンでお馴染みのロイ・トーマス・ベイカーで、
正にあの粒の起った装飾過多でエッジの効いたサウンドを響かせてくれる。
故に結構プロデューサー色が強過ぎるきらいも有りそこは判断が別れる所だろう。
イントロでギターをこれでもかと弾き倒す「ステージ・ウィスパーズ」から始まり、
名曲中の名曲であるポップでコンパクトなシングル曲「魅惑の淑女」へ続き、
ヘヴィなリフが唸る「シスター・シーガル」、夢見心地な「夢世界の調べ」、
ネルソンの青臭い文学趣味炸裂の「わが憧れのジャン・コクトー」と流れ、
止めのハードでポップな「ジゴロの唄」と息をも付かせぬ本編である。
特に「魅惑の淑女」と「ジゴロの唄」のシングル2曲は本当に最高の名曲で、
メロの良さも然る事ながら、サビの後に入るギターの小刻みなカッティングや、
唸り音などの小技が見事であり、曲展開の捻くれ加減も最高なのだが、
ボートラで入っているシングル・バージョンではその辺がアレンジされていて、
故に楽曲の魅力が半減されている様に感じてしょうがない。
どうしてシングルはアルバムと同じアレンジにしなかったのか解らないが、
もしかしたらこちらがネルソンの当初描いた姿だったのかも知れない。
3作目の「炎の世界」はプロデュースをこれ以降も続くジョン・レッキーに変え、
ハードさとポップ加減が丁度良い具合に混ざり合った作品と成った。
前作の作風に通じるハード・ポップな「熱く疼く夜」なども有るが、
今作から加入したキーボードの音感を生かしたカラフルな楽曲が目立つ。
冒頭の「公正な取引」からしてそうだが、浮遊感のある「空間での生活」、
鍵盤とギターの絡みがこれこそモダーンポップな「闇夜の航海」など最高だ。
それまで顔を出していたネルソンの文学趣味がこの頃からSF方向へ行き始める。
そんなネルソンのSF趣味が炸裂したのが4作目の「モダン・ミュージック」。
一般的にはこれこそが彼らの最高傑作であり、その評価を裏切らない内容である。
前作で米国デビューを果たしたついでに初の米国ツアーに出たバンドだが、
巨大な音楽ビジネスと供に、アメリカと云う異国での印象が強烈だった様で、
恋人と離れたメランコリックな気持ち等もSF趣味と供に作風に取り入れられている。
ギターバンドとしてのビー・バップ・デラックスを前作で全うしたネルソンは、
今作でトータルなバンドサウンドの確立を目指したと語っている。
その言葉通り派手に弾ける様な曲は少なくなったが、コンパクトだがフックの多い、
正しく、これぞ「モダーン・ポップ」と言いたく成る楽曲に溢れている。
冒頭のロマンテックな「バビロンの幽閉者」、ポップな「妖しき月の女神」、
疾走感の有る「情念の残り火」と印象に残る曲が続くが、
メインはアナログB面の頭から始まっている「モダン・ミュージック」組曲。
ラジオのチューニング音と供にビー・バップ・デラックスの曲の断片が混ざり、
そこにデビュー前からネルソンを助けていた、かのジョン・ピールのDJが重なり、
ようやく合ったチューニングと供に溢れ出す曲のイントロが素晴らしい。
離れて過ごす恋人との甘い夢想を、フラッシュ・ゴードン等の、
レトロ・フューチャーなSF世界を背景に、メロデックに織り成し、描き出して行き、
インストを挟んで冒頭のメロディをリプライズする組曲の構成は、
ラジオから流れて来た一幕の夢物語の如く絶品である。
そんな「モダン・ミュージック」ツアーの様子を捉えたのが、
とうとうジャケが「メトロポリス」か!と云う感じの「ライブの美学」である。
実際にライブ中に「カリガリ博士」等と並んで映像を流していたらしい。
アルバムではギターバンドとしての姿を封印した言っているネルソンだが、
何だかんだ言ってライブでは弾きまくりで、流石に一人で目立っている。
そしてバンドの方も緻密さよりライブでのダイナミズムを表現している感じだ。
アナログには未収録の楽曲が三曲入っているのも珍しい。
是非、絶頂期なこの頃のステージ映像が有ったら見てみたいもんだなぁ・・・
そしてこのバンドのラストを飾るのが、ネルソンのSF志向の高まりと供に、
サウンド的にニュー・ウェーブ/テクノ路線に接近した「プラステック幻想」だ。
勿論ビー・バップ・デラックスならではのポップなメロディは健在だが、
英国の空の如く、薄く靄が掛った様や音や跳ね切らない展開はちょっと異質で、
解散後にネルソンが組む「レッド・ノイズ」の前段階的な音と云う感じで有る。
ちなみにこの作品は当初2枚組みで発売される予定で21曲が録音されたそうだが、
諸般の事情で幾つかの楽曲が削られ現在の形に落ち着いたらしい。
その中にはアルバムに先がけて発売されたシングル「ジャパン」も有るのだが、
この曲が日本を題材にしているのに中華風メロディが聴けると云う、
典型的な勘違いオリエンタル曲で、その辺が実に英国風と云うか、
(バンドの)ジャパンとか、YMO辺りを髣髴とさせる所は後の活躍を予見させる。
ジョン・レッキーはこの辺での経験を糧にXTC辺りに生かしたのかもしれない。
先ほども書いた様に、ネルソンはビー・バップ・デラックスからKeyだけを残し、
実弟のイアンと、メカニカルなテクノバンド「レッド・ノイズ」を結成するが、
そちらも隠れた名B級バンドなので、是非とも再発して欲しいもんです。
いやビー・バップ・デラックスが出たなら次はコックニー・レベルに決まりだろう?
と云うかコックニー・レベルも早く出してください・・・・
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