アンソロジーの愉しみ~ジャズ篇
アンソロジーの愉しみは、コンパイラーのセンスが総てである。
奇抜な主題の選び方、集める断片の豊富さ、それらを纏める編集の妙がある。
一番簡単な物は、評価の高い物を網羅的に集めるベスト的な編集だ。
勿論一口に「ベスト」と言っても選者の選び様によって如何様にも変るが、
やはり余り有名ではない作品を或るテーマの下に愉しませる編集こそ、
アンソロジーならではの愉しみだと言えるのではないだろうか?
と云う訳で今回のアンソロジーの愉しみはジャズのコンパイル盤である。
モダン・ジャズの全盛期である5~60年代はようやくLP盤が普及し始めた頃で、
アルバム単位としてのコンセプチュアルな要素を持った作品は余り多くなく、
盤単位で聴かないと意味が失われるロックの名盤などに比べれば、
「名盤」と云うより「名演」「名曲」で語れる事が多いジャンルだと思う訳で、
個人的にアンソロジーには向いたジャンルではないかと思っている。
(まあしかし中山康樹氏の「超ブルーノート入門」とか読んでいると、
プロデューサーのアルフレッド・ライオンが如何にブルーノートの作品を、
コンセプチュアルな考えの基にリリースしているか解るし、
時代下ってジョン・コルトレーンのインパルスでの諸作などは、
やはりアルバム単位でしか考えられない作品なのは事実な訳だが・・・・)
ジャズの総本山とでも言うべきブルーノートのコンピ物はそれこそ山ほど有るが、
今回紹介するのは90年代にリリースされた廉価なコンピ盤シリーズである。
一口にシリーズと言ってもリリース元が英国だったり米国だったり色々だが、
何となくコンセプトが似ている作品なので一括りにして考えている。
ブルーノートの名前が付いているがブルーノートの作品だけを集めた訳ではなく、
販売元が持っている他のレーベルの音源も同じ様に収録していて、
英国のEMIが出した作品には1~2曲90年代の音源も混じっていたりする。
つまり「ジャズ=ブルーノート」的な意味で捉えている様な感じだろうか。
ただ廉価な割に非常にコンセプトが面白くジャケも良く、新しい発見も有りで、
輸入盤屋で見付けるとついつい買い込んでかなりの数が集まった。
このシリーズで一番有名なのが多分「BLUE BOSSA」だと思う。
これは中身は同じながらジャケが違う盤を何枚も見たし、日本盤も出ていたと思う。
中身はもう文句無しのジャズ・ボッサの名曲ばかりで、
ハンク・モブレーの「リカード・ボサノヴァ」やホレス・パーランの「コンガグレ」などなど
クールでヒップな選曲は万人にお薦めできる内容である。
90年代と言えば英国でのアシッド・ジャズ・ムーブメントへと発展した、
所謂、ダンサブルなジャズの再評価の時代である、
故に余り日本では顧みられて来なかったブルーノート4000番台後半の、
ソウルやファンクに接近して行った時代のコンピ物なども多く出され、
このシリーズでもヒップホップの元ネタを収録した「BLUE BREAKBEATS」が、
全部で4枚も出回るほどヒットし、西海岸物を扱ったシリーズも出回ったりした。
それはそれでそれぞれ面白かったりするのだが普通過ぎるので今回は外して、
こんなディスカヴァー的な作品を紹介してみようと思う。
まずはモダン・ジャズの聖地ニューヨークを主題にした「BLUE YORK BLUE YORK」。
女性フルート奏者ボビー・ハンフリーの「ニューヨーク・タイムズ」に始まり、
ブロードウェイ、サヴォイ、バードランド、ハーレム等を通り抜け、
MJQの演奏に乗ってセントラル・パークでスケートを楽しみ、ラストで再び、
ボビー・ハンフリーの「ハーレム・リバー・ドライヴ」で〆るNYの音楽小旅行だ。
次はもっと規模が拡大されて米国横断と言った感じの「BLUNTED STATES」。
米国開拓の道「ルート66」で始まり「我が心のジョージア」で〆る。
前作にも収録されたジミー・スミスの「ハッケンサック」が入ってたりするが、
ケニー・ドーハムの「フィリー・ツイスト」ジョン・パットンの「メンフィス」、
ウィントン・ケリーの古い「ムーンライト・イン・ヴァーモント」もシブい。
当時最新作だったカサンドラ・ウィルソンのヴァン・モリソンのカバー曲、
「トゥペロ・ハニー」が意外に上手く溶け込んでいたりする。
お次は差別の激しかった米国のジャズメンが尊敬を持って迎え入れられ、
多くの交流や楽曲を残して行ったフランスはパリを題材にした「Le Paris Blue」。
パリに住んで活躍したデクスター・ゴードンやバド・パウエルは当然として、
伝説のジプシー・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの「ヌアージス」、
ジャンゴとステファン・グラッペリのホット・クラブ・オブ・フランセの楽曲、
そのジャンゴを題材にしたMJQの「ジャンゴ」をジョー・パスがカバーした曲、
勿論MJQのミルト・ジャクソンの「アフタヌーン・イン・パリス」も収録だ。
で、更に続くジャズの旅は遠い故郷アフリカへ!それが「AFRO BLUE」だ。
コルトレーンの演奏でお馴染み「アフロ・ブルー」をダイアン・リーヴスが歌い、
始原のリズムを追求したブレイキーのブルーノートの太鼓祭り盤から3曲も収録。
呪術的なリズムで聴かせるホレス・パーランの「ホーム・イン・アフリカ」、
シャープな演奏を聴かせる後期リー・モーガンの「ミスター・ケニア」も良い。
同じくこのシリーズ物で多いのが作曲者別にコンパイルされたアルバムで、
ガーシュイン、モンク、バカラック、ビートルスなんかも有るのだが、
新しい発見が有って面白かったのが映画主題歌集「BLUE MOVIES」。
カウント・ベイシーによる「ロシアより愛をこめて」とか、
ウィリー・ボボの「コジャック」、スリーサウンズの「スタートレック」、
ボビー・ハッチャーソンの「マッシュのテーマ」なんかが面白い。
リー・モーガンの「真夜中のカウボーイ」は実に似合っているなぁ・・・
他にネタとして面白いのがブルーノートのシングル盤を集めた「BLUE 45s」。
日本でも似た様な盤が出ていた様に思うが、これは中々興味深いし重宝する。
シングル盤に収める関係上、所謂エディットされたバージョンな訳だが、
印象的なテーマ部分を中心に編集された関係でコンパクトでノリが良い。
大ヒット曲、ルー・ドナルドソンの「アリゲーター・ブーガルー」とか、
ハービー・ハンコックの「ブラインド・マン、ブラインド・マン」など、
財政的に苦しかったブルーノートを救ってくれた有名シングルの他に、
シングル出てたの?って感じのドン・ウィルカーソンの「キャンプ・ミーティン」、
ホレス・シルヴァーの「サイケデリック・サリー」なんかが珍しい。
・・・おおっと長く書き過ぎたな・・・続きはまたいずれ。
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