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2010.05.29

PC移行中に付き・・・

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長らく使っていたPCがそろそろ老朽化して来たので、新しいPCを購入し、
現在諸々のファイルその他を引越しの真っ最中である。

新しいOSには「引越しツール」なる物が存在しており、
本などを読めば「ファイルの移行も楽々」等と書かれては居るが、
実際にそうは問屋が卸さない事は長くPCを使っている人には良くお解りだろう。
有るべき所に行かず、意味不明な所に引越ししているファイルだとか、
「結局手動かよ!」と吐き捨てる様な最終局面を何度か迎えている。
そもそも唯々諾々とファイルは「マイドキュメント」だけに入れたりしないし、
OSに付属したプラウザ等を使ってる訳ではないからしょうがないのかもしれないが、
PC乗り換えるのってこんなに面倒臭かったか?と云う日々を過ごしている。

Pc01

結局最強に評判の悪かったVistaには乗り換えずにXPを使い続けていたので、
今回、非常にインターフェイスと操作感が変わった感じが強い。
OSに関しては今まで95→Me→XP→7と云う様な感じで使っていたのだが、
MeからXPに移った時以上に操作感が顕著に変わった様な感じで有る。
それにしても95の牧歌的なインターフェイスが懐かしいなぁ・・・・
やはり使い始めの頃だから一番印象に残っていると云う感じだろうか?
致命的なエラーを起してOSを再インストールしたのも95だったし、
知らぬ内にウィルスなどに感染して周囲に迷惑掛けていたのも95でだった。
しかし自分の物ではなかったが、家に有ったDOS/VマシンのPC-98等で、
ぽちぽちとコマンドを打ち込んでワープロとして使っていた頃を考えると、
Mac機で体験済みでは有ったが、GUIの勝手の良さには感動した物だ。

Pc02_2

それにしても当時のネットはダイヤル・アップのナローバンド時代、
画像一つ落としてくるのにカップ麺が出来上がっていると云う位で、
ブロードバンドの昨今等とは比べ物に成らないが、それでも面白かった。
今更指摘するのも何だが、某巨大掲示板などで使われる職人技のAAなどの発展は、
ナローバンド環境故に生まれて独自に発展して来た物な訳で、
表意文字として余りにも表情豊かで、或る種アート的でもある顔文字等と供に、
それが現在も継承され、発達し続けていると云う事実が愉しい。

それにしても95の頃から比べるとOSは随分と落ちなくなって来た物だ。
昔はそれこそ肝心な所で必ず落ちる所がギャグのネタに成っていた位だが、
XPなどは本当に安定していて動くので隔世の感が有る。
そう考えると余計な機能を追加したり操作性を変えたりせずに、
このままOSの安定性を計る方向に行けば良いのに、と思ってしまうが、
まあ企業としてそう云う訳にも行かないと云う所なんだろうが・・・

とりあえず早く新しい環境に移さなければ・・・・と云う様な昨今である。

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2010.05.22

ロニー師匠を偲んで

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誰かの死を他の誰かと比べる事が無意味なのは良く解っているが・・・

新聞などで訃報のニュースを見る度に浮かぶ反応は様々であるが、
久し振りに記事を眼にした途端「え・・・嘘?」と呟くなり絶句してした。
がんの治療をしていると云うのは雑誌で読んで知ってはいたが、
まさかこんなにも早く逝ってしまうとは想像だにしなかった。
それは彼が単に「昔は凄かった人」等では更々無く、
六十代半ばなのに現在進行形で凄いと云う、或る種超人的な人だったから、
まだまだその凄味を見せ付けてくれると思っていたからなのかも知れない。

ロニー・ジェームス・ディオ。
「師匠」「小さな巨人」「シャウトする妖精」「HM界の北島三郎」等々と呼ばれ、
最高峰に位置する歌唱と、愛すべきキャラクター、オープンな人柄でもって、
世界中で愛され尊敬された偉大なる「小さな巨人」が逝ってしまった。
「ELF」「RAINBOW」「BLACK SABBATH」「DIO」そして「HEVEN&HELL」と、
耀かしいキャリアの中で幾つも名盤に幾つもの名唱を残し、
年齢と供に歌唱が困難に成る、エクストリーム極まりないこの業界に於いて
IRON MAIDENのブルースと供に、衰えを感じさせない奇跡の喉を賞賛された男。
実際、大人の事情でサバスの名前が使えなかった所から名乗った、
ほぼディオ期サバスの再結成バンド「HEVEN&HELL」の「Devil You Know」にて、
各所で絶賛される仕事を成し、ここ日本でも賞賛されるライブを行い、
健在さをアピールしていた矢先だったと云うのに・・・

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ロニー師匠の歌唱は正しく唯一無二の物だ。
かつてBURRN誌に於いてロニー師匠の歌唱分析記事が載っていた事が有って、
極端な語尾でのヴィブラートの掛け方、強調部分で単語を執拗に連呼し続ける、
単語により「Power」を「ぱぅわぁ」「Evil」を「い~ぼぉ~」と発声する等々、
その様な記事が書けるほどロニー師匠の歌唱は一聴して解る独特さだった。
故にガキの頃は皆してメロイック・サインを掲げロニー師匠の真似に励んだ物だ。
何処かユーモラスなステージでの動きも恰好のネタに成った。
超人的なのに何処か親しみの持てる人柄と云うのもとても大きい。
映画「METAL-Head Bangers Jorny」で、ロニー師匠宅に案内された映画クルーが、
師匠宅の剣で、師匠とチャンバラする場面など実に人柄が良く出ていたし、
先に書いた台湾の閃靈(ChthoniC)がレコーディングで米国に行った際に、
メロイック・サインを掲げたロニー師匠と写っているカットが有って和んだ。

しかしまあそれも珠玉の名唱・名演が有ってからこそだ。
RAINBOWなら全部!と言いたい所だが、とりあえずライブ盤のオープニング、
ドロシー少女の台詞から「Over The Rainbow」そして「Kill The King」への流れ、
これに燃えないメタル者は皆無だろうと云う泣く子も黙るキラー・チューンだし、
ロニーの紡ぐ詩とテンションの高い演奏が凄まじいグルーヴで迫って来る、
「虹を翔る覇者」のB面の2曲には何度固唾を呑んで聞き惚れた事か。
「16世紀のグリーン・スリーヴス」の叙情性、「虹をつかもう」の幻想性、
「バビロンの城門」の・・・ってキリが無いからこの辺で切り上げるが、
DIOに於ける「The Last In Line」のRainbowに迫るが如き構築性、
ソリッドなリフからスピーディに展開して行く珠玉の「Stand Up And Shout」、
円熟と云う言葉に相応しい歌唱が聴ける「Holy Diver」や「We Rock」、
ポップ過ぎると揶揄されるが「Mystery」や「Hungry For Heaven」も大好きだ。
そして忘れてはいけないのが、ロニー師匠が加わったBLACK SABBATHである。

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と云う訳で先月、しばし国内廃盤状態だったディオ期サバスの音源が、
SHM-CDの紙ジャケにデラックス・エディションと云う形で再発された。
(元々この紙ジャケをネタに一本書こうと思って用意していた所に、
ロニー師匠の訃報だったので、衝撃が三倍増しと云う感じだった訳である)
そもそもこれの紙ジャケ・リリース自体は昨年に決っていたのだが、
英国のサンクチュアリから二枚組みのデラックス・エディションによる、
リマスター再発が4月に決ったのを受け、日本でも同様の仕様に変更に成った訳だ。

今では少なくなった様だが、ハードコアなサバス・ファンの中には、
ディオ期のサバスを別物と見做し無視する様な連中が多かった。
確かにこちらも超個性的な声を持つオジーが暗黒の世界を演出する、
ドゥーミーでアシッドな従来のサバスのイメージからは隔たりが有った。
当時はサバスがレインボー化した等と揶揄された物だったが、
ロニーが脱けた後のレインボーを聴けばこれまたロニー期とは違う音な訳で、
ロニーと云う触媒がバンドにもたらす影響が余りも大きいと云う事なのだろう。
とは云え様式美的な要素を含んだ演奏をここで披露したお陰で、
今後のアイオミ=サバスの方向性はグッと拡がったのは間違い無い。

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さて最初は後にバンド名としても甦る珠玉の傑作「ヘヴン&ヘル」。
シングル・ジャケにバンド・フォトをあしらった味気ないボーナス・紙ジャケ、
レアなフォトに各国のシングルのジャケ写を収めた最新のブックレット、
英国初回盤レーベル・カードに日本の初回盤LP帯を再現した帯が付けられている。
ボーナス・ディスクの方はシングルのB面に収められていたライブ音源、
米盤シングルに納められていた「Lady Evil」のモノラル・バージョン、
そして80年の米国ハートフォードでのライブ音源が4曲収められていて、
シングルでは途中でフェードアウトしてしまう「Heaven&Hell」も、
12inに収録された完奏するバージョンが収録されている、と云う感じだ。
本編の方に関しては、何を今更な名作な訳で内容に触れる必要は無いだろう。

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そしてお次がビル・ワードが脱けヴィニー・アピスが加入し制作された、
サバスらしい暗黒さや重さが戻った感の有る「悪魔の掟」。
コーティングされて中々発色が美しいシングル・ジャケに
表はライブ写真、裏は「悪魔の掟」と同様と云う意味不明なボーナス・紙ジャケ、
プログラムの表紙やフライヤー写真も豊富な最新ブックレット、
そして「Heaven&Hell」同様レーベル・カードに日本盤LP帯と云う仕様だ。
さて今回のデラックス・エディションで最も意味が有るのがこの盤で、
米ライノから07年に限定で五千枚リリースされ殆んど日本に入って来なかった、
81~82年の年末年始に英国ハマースミス・オデオンで行われたライブ音源を使った、
「Live At HammerSmith Odeon」が完全収録されているのである。
これがもう実に素晴らしい出来で、充実した演奏と圧倒的な歌唱が聴ける。
イントロの「E5150」を切り裂くソリッドなアイオミのギターと演奏の上に、
気力も充分なロニー師匠のシャウト一発でテンションは一気にMAXである。
そしてギーザーのベースがうねるは歌うは悶えるわと凄まじい存在感で、
ロニーの歌唱も相まってオジー期のナンバーもアグレッション三倍増しだ。
「Country Girl」とか「Slipping Away」と言ったレアな曲が聴けるのも嬉しい。

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「Live At HammerSmith Odeon」のオリジナル盤

この二枚と同時にライブ盤である「ライブ・イーヴル」も紙ジャケで出たのだが、
単純に紙ジャケ仕様と云うだけで特にレア音源などの収録も無いし、
プラケのCDも持っているから「悪魔の掟」のライブが有れば充分だな!
と云う感じでライブ盤の方は個人的に今回はパスしている。
とは云えライブ盤も問答無用な名盤ゆえ、未聴の方はこの機会に是非。

前回「HEAVEN&HELL」で来日した時に知り合いが観に行って、
「や~ロニー凄えわ、とても六十代の人間のパフォーマンスじゃねえよ」、
と語っていて非常に羨ましかったが、あれが最後の来日に成ってしまった訳か・・
コージーが亡くなった時点で三巨頭時代のレインボーは不可能に成った訳だが、
あの再結成話が上手く運んでいればなぁ・・・・
ああ素晴らしい人ほど早く天国に召されて行く・・・言葉通りに・・・R×I×P。

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             今頃天国で・・・・

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2010.05.15

世界は今、日本に萌えているのか?

「世界中で日本のアニメが大人気」
と云うちょっと薄ぼんやりした認識は多分殆んどの日本人が持っていると思う。
断片的な報道や好奇的なニュース等でそう云う話が流れる事も多く成った。
しかし具体的にそれがどう云う事態なのか、自分も含め殆んど知られていない。
外国に居留している人間でも、興味が無ければ知る機会は少ないだろうし、
況してや一国のみならず世界規模でその状況を把握するのは不可能に近い。
しかし、当の日本人が知らない内に世界では凄い状況に成っていた。

それと同時に、今や世界言語の一つに成った「Kawaii(カワイイ)」と供に、
日本発のファッション・カルチャーが世界で凄い事に成っている。
これに関しては個人的に以前から或る程度の認識が有った。
No DoubtのVoであるグウェン・ステファニーがその最初のソロ・アルバムに於いて、
「Harajuku Girls」と云う曲を披露し、制服もどきを着たダンサーを従え、
裏原に代表される日本のストリート・カルチャーをリスペクトしていたり、
海外の若いバンドや俳優が来日すると、原宿やアメリカ村等に嬉々として出掛け、
狂った様に買い物をしていると云う記事を読んだりしていた訳なのだが、
決定的なのが何と言ってもNHKの「東京カワイイTV」を観だしてからだ。
今や流行のファッション等とは百万光年も彼方のオッサンに成ったが、
この番組で繰り出される最前線のストリート・カルチャーは実に興味深いし、
ガラパゴス的な極度に独自に進化したその世界は門外漢でも充分楽しめる。
例の外務省「カワイイ大使」の存在を知ったのもこの番組でだった。
で、流石に国営放送だけ有って支局による海外取材等が充実して、
海外に拡がる日本のストリート・ファッションを現地取材で見せてくれるのだが、
ゴスロリから、なんちゃって制服、ギャル、ネイル、デコ、古着、プリクラ、
スイーツ・モチーフ、等々が凄まじい伝播力で世界に伝わっている事を知った。
その情報と云うのは、飽くまで一つの「点」でしかなかった訳なのだが、
この著者の本を読んでそれが大きな「線」と成り世界に拡がっている事を知った。 

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著者の櫻井孝昌と云う人は外務省のアニメ文化外交の有識者会議委員を務める人で、
「ポップカルチャー外交」で世界中を廻り講演やイベントを手掛けていて、
例の「カワイイ大使」の選定・委任にも関わっている人なのだそうだ。
アニメ外交と云うのは、まあ平たく言えば「アニメを通じてもっと日本を理解し、
日本に興味を持ってもらおう」と云う「官」主導の活動、とでも言う感じか?
それまで伝統文化・芸術等が担っていた部分をアニメに担当して貰う事にして、
その一環として各地での講演の為に著者が呼ばれた、と云う経緯らしい。
そこでの経験が最初の著作「アニメ文化外交」に描かれているのだが、
そこで著者もそして読者も、当の日本人が知らぬ所でアニメやマンガが、
世界中で起している凄まじい熱狂を知る事に成る訳である。
フランスの「ジャパン・エキスポ」に付いては報道で知られている所も有るが、
それ以外にもヨーロッパでは把握出来ない数のアニメのイベントが行われており、
スペイン・イタリアなどそれぞれ数万人規模の動員を誇る大規模な物も多い。
しかし得てして数字だけを記した所でその熱狂を伝える事は難しい、
要はその場に集うファン達の余りにも熱過ぎる熱狂振りなのだ。
一々ここでその例証を挙げるのは意味が無いので読んで貰うしか無いのだが、
イタリアはローマの学生に「日本のアニメは好きですか?」と聞いた所、
「僕たちは(日本の)アニメで育っているんです」と云う言葉が象徴的だ。
「やおい」のマンガが好きだと云うミャンマーの女子学生、
ウルトラマンに出て来る怪獣の名前を暗記している学生や、
「鋼の錬金術師」の主人公に熱狂するサウジアラビアの女子学生たち。
サウジである!あのイスラム教国で最も保守的と言われるサウジの学生がである。
日本のアニメやマンガが国境や宗教を軽々と越えているこの事実・・・

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そして著者は世界中を巡っている内に有る事実に気付く。
アニメのイベント会場には今や当たり前の様にコスプレーヤー達が存在するが、
その中に日本のストリート・ファッション、所謂「原宿スタイル」である所の、
ゴスロリ、ロリータ、なんちゃって制服を着た女の子が激増している事に。
彼女達が原宿スタイルを知ったきっかけは様々に有るだろうが、
一番大きいのはやはりアニメやマンガの登場人物に拠ってが多いらしいのだ。
ゴスロリが世界でも人気な「NANA」や「Death Note」辺りがきっかけなのに対し、
制服が「エヴァ」や「ハルヒ」等から来ていると云う話には成るほどと感心する。
そんな、アニメやマンガに続いて日本発信の文化として世界中に蔓延する、
「カワイイ」の実相をレポートしたのが、二冊目の「世界カワイイ革命」である。

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青木美沙子嬢とロシアのロリータの皆さん

しかし凄まじい捻じれ具合である。
本来ヨーロッパ由来のファッションであるロリータが、
極東の地で極端にデフォルメされて再びヨーロッパに戻って来ているのだ。
カワイイ大使を務めるロリータ代表の青木美沙子嬢はロリのカリスマであり、
世界中のロリータ達の憧れであり、世界中で羨望を持って受け入れられている。
かつて白人女性を羨望していた日本人が逆に羨望されているのだ、
それも世界基準に合せたのではなく、日本独自のスタイルに拠ってである。
そして制服だ、これほど日本的な独自のスタイルは無いだろう。
本来制服でなく私服OKなのに、わざわざ制服っぽい服を着ると云う、
「なんちゃって制服」からしてかなり捻じれまくったスタイルだと云うのに、
それをファッションとして世界中の女の子が着ていると云う事実が凄過ぎる。
ヨーロッパの女の子達の着こなしもかなりレベルが高い所に有るが、
タイ等の東南アジアに到っては最早日本人と全く見分けが付かないレべルに有る。
確かにこの制服スタイルの浸透振りを見ていると、
制服スタイルで統一されたAKB48の海外での人気も解ると云う物だ。
極度に職人技化している日本のネイルアートやデコ、スイーツ・モチーフの数々、
そして世界に轟くサンリオ謹製の小猫に代表されるキャラの人気などなど、
日本語で「カワイイ」としか表現出来ない数々は今や世界に冠たる物である。

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なんちゃって制服姿のローマの女子たち

そしてそれが先に出たアニメ・カワイイ外交の要諦の様な物な訳だが、
日本の作品や物を愛する事でそれが産まれた背景や世界をもっと知りたくなる。
つまりそれにより日本と云う国と文化の理解が世界中で深まると云う事実なのだ。
確かに作品を読んでいて深い部分で理解出来ない所があれば、
マンガやアニメに関係無い部分であってもそれを知りたくなる。
作中の人物が将棋や囲碁を指していればそれがどう云う物か知りたいし、
美味そうに食べている物が有ればそれはどんな味か知りたくなる。
プラハの大学生が来日した時にわざわざ出掛けたのは、
「らきすた」でお馴染みな埼玉は鷺宮の神社だったと云う。
「アニメ・ファンは作品を観る事で完結して日本の文化まで興味が及ばない」
と云う、これまでの「官」の論理は安々と覆されて行く訳で、
サブカルチャーの浸透は間違い無く日本の文化理解に貢献していると言えるだろう。

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そしてアニメ・マンガにカワイイも含めて、最新の世界状況をリポートしたのが、
三冊目に成る「日本はアニメで再興する」である。
日本では、ほぼ相反するとでも云う感じの「秋葉原」と「原宿」の文化が、
世界では混ざり合って進行している様が良く解るし、
今回は南米はブラジルでの凄まじく熱いファンの盛り上がりと、
ビジュアル系バンドに熱いラブコールを送るロシアのファンの話など盛り沢山だ。
それにしても「アニソン」と「ビジュアル系」と云う、
やはり日本独自の音楽に注がれる世界の熱い視線を忘れてはいけない。
以前TVで影山ヒロノブがブラジルで行ったライブの映像を観た事が有るが、
「ドラゴンボール」の主題歌の時の凄まじい熱狂振りに圧倒されたと同時に、
元同輩のLOUDNESSにようやく追い付けたか!と云う妙な感慨に浸った訳だが、
影山率いるJAM Projectは今や普通に世界ツアーにも出掛けているし、
アニソンの象徴とでも云うべき存在の水木(アニキ)一郎に到っては、
「wikipedia」に於いて、日本を含む世界の91の言語で紹介されており、
かの黒澤明を抜いて世界で一番有名な日本人として認定されている訳である。
本書にもアニソン歌手に成りたいと来日してコンテストで優勝しきっかけを掴み、
現在HIMEKAと云う名で活躍するカナダ人女性の話が出ている。

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バルセロナのギャルサーの皆さん

しかし何故ここまで世界中に爆発的にアニメやマンガが浸透したのか?
それはインターネットの普及と海賊版の横行による部分が有る。
情報の少ないマンガやアニメ、ストリート・ファッションに関する情報などは、
今やリアルタイムで世界中からアクセス出来る様に成ったし、
当然値段は高くなるがネット通販等により最新商品の入手も可能に成った。
反面、最近はかなり正規の版権を結んで出版されているマンガも多くなったが、
粗悪な海賊版も多く、更に深刻なのがネットによる違法ダウンロードだ。
ネットの浸透はマンガやアニメにとって諸刃の刃と成っている訳だ。
各書のまとめにあたる部分にそれらに対する著者の提案が成されているが、
中々微妙な問題なだけに今後の課題と成る部分だろう。

しかしこれらの事実を知って当事国の人間として当然誇らしく思う反面、
結構当惑する部分も無きにしも非ずである。
「嬉しいけれどそこまで言われるほどの物か・・・」と云う様な。
アニメやマンガに存在するダークサイドな部分も無視は出来ない所だし、
日本という国に掛けられた過剰な羨望が日本人としてやや重い部分も有る。
しかし「日本が好意を持って受け入れられている」と云う事実は、
確かな事実として受け入れなければいけない事だし、
何より精通した文化を世界中の人間と分かち合えると云うのはやはり素晴らしい。
それがどんな物であれ、どんな形であれ。

写真は櫻井孝昌氏の「週間アスキー」連載記事より

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2010.05.08

寅年の台湾 其の三 再び閃靈の話

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さて台湾旅行に掛けて実に3年振りで「閃靈(ChthoniC)」の話である。

この間バンドも色々有った訳だが一番大きいネタは待望の新作の発表だろう。
原題は「十殿」外題を「Mirror of Retribution」と云うこの作品は、
台湾では昨年の8月に、日本では10月にようやく発売された。
前作「賽德克巴來」の発売から5年、実に鮮やかな成長の跡を見せてくれる。

さて台湾盤はいずれ現地で買うとして、とりあえず日本盤をすぐに購入した。
ボートラの数は多いし、何よりも歌詞対訳を楽しみにしていたのだが、
どうも対訳詞を読んでいてもいまいちコンセプトの内容が伝わって来ない。
英語で今作のコンセプトのアウトラインも書かれているのだが、
中国語発音の固有名詞が英語で記されていてそこも掴み難い部分に成っていた。
後に台湾盤を買って歌詞を見比べてみると、まあ当然と言えば当然だが、
ミニマルな表現に適した表意文字である漢字の歌詞に対して、
英語では説明よりも歌詞の載りに重点が置かれ、意味が伝わり難く成っていた。
(例えば6曲目の最後のフレーズ「Terror Was Born By The Pale White Sun」、
日本語の訳詩では「青白い太陽から恐怖が生まれた」と成っているが、
原詩の「惨白的日頭 永世獨裁」だと、中華民国の国旗である青天白日旗が、
虐殺する国民党=独裁者の象徴として歌詞に込められているのが良く解る。)

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今作は「賽德克巴來」に於ける「霧社事件」をモチーフにした様に、
戦後台湾史の闇を彩る内戦、と云うか虐殺事件「228事件」を軸に添えている。
自分も含めて多分多くの日本人が現地でもタブーだった「228事件」を知ったのは、
侯孝賢監督の名作「非情城市」に拠ってではないかと思う。
「非情城市」は事実の残虐さよりも庶民の悲哀や抒情を描いた作品に成っているが、
後に関連書籍で読んだ「228事件」とそれに続く「白色テロ」の内情は、
カンボジアのポル・ポト政権による虐殺に匹敵する凄惨な事実だった。
今回も自国の暗黒史・虐殺史をブラック・メタル的なアングルにはめ込んだ、
西洋のバンドには無い独特の世界観をコンセプトの世界から築き上げている。

本作のコンセプトはこうだ。
主人公は台湾中部南投県捕里にある醒靈寺に住む霊力の高い少年僧・潘正源。
ここは「烏牛欄之役」と呼ばれた228事件最後の激戦区にある寺である。
予てからこの世とあの世を行き来出来た潘正源は闘いに赴く仲間達に誓った、
あの世に向かい生死簿を奪い取り、生死を制御し、仲間の命を保護する事を。
地獄に突入した潘正源はそこで想像を絶する台湾人の死せる魂を目撃し、
己の使命の重大さを思い知り必死の思いで生死簿の奪取に急ぐが、
寸での所で地獄の獄卒に阻まれ、更には潘正源の肉体も封印されてしまう。
あの世へ向かう術が無くなり、現世に戻ってきた潘正源が見た物は、
先程見たのと変わらない、人々の死骸が溢れる現世に現れた地獄その物だった。
絶望と憤怒にかられた潘正源は自ら自殺を選び再び地獄へとその身を投じる。
しかし菩薩により霊力を封じられた潘正源に為す術は無く、
この大宇宙が滅亡する時まで輪廻転生出来ないと云う「孽鏡沉暮」の刑が下される。
地獄の十の宮殿を司る十人の冥府の王と十八種の様々な中華社会的地獄絵図、
そして永劫に続く責め苦の果てに潘正源が見た物は・・・・

さて本作のタイトルにも成っている「十殿」だが、
冥途に於いて、亡者の罪を裁き勧善懲悪を計る十人の王とその宮殿の事で、
初七日に秦広王、二七日に初江王、三七日に宋帝王、四七日に五官王、
五七日に閻羅王(閻魔大王)、六七日に変成王、七七日に太山王(泰山王とも)、
百日に平等王、一年に都市王(都是王とも)、三年に五道転輪王と、
何と三年もの長きに渡り裁決を受けた後にそれぞれ地獄に落とされる。
故に生前の功徳を積んで置こうと云う日本も含めた東アジアで隆盛して来た教えだ。
地獄の様相はそれぞれの国で様々なパターンが有り、日本などでは等活・黒縄・
衆合・阿鼻・叫喚・大叫喚・焦熱・大焦熱の「八大地獄」が有名だが、
道教文化が混入している地域では「十八大地獄」が良く知られている。
先の「八大地獄」が総て炎熱系の地獄なのに対し、
そこに十の寒冷地獄を加えて「十八大地獄」とする所も有るようだが、
それぞれ生前の罪業に合せた①刮舌地獄②剪刀地獄③鐵樹地獄④孽鏡地獄
⑤蒸籠地獄⑥銅柱地獄⑦劍山地獄⑧冰山地獄⑨油鍋地獄⑩牛坑地獄⑪石壓地獄
⑫舂臼地獄⑬血池地獄⑭枉死地獄⑮磔刑地獄⑯火山地獄⑰石磨地獄⑱刀鋸地獄
と云う、恰も難解な中華料理のメニューの如く、
バラエティに富んだ怖ろしい責め苦の数々が咎人の為に用意されている。
台湾の台南は麻豆に有る代天府には電気仕掛けで動く異常にキッチュだが、
故に不気味な「十八大地獄」なる施設が有り今でも冥途の恐ろしさを伝えている。
幼い頃に見て恐怖したそう云う十八大地獄の様相が、
Freddyに今作のコンセプトを描かせた一因に成っているのかもしれない。

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今回日本盤は普通のプラケースなのだが台湾盤はデジパック仕様で何気に豪華で、
更に今回台湾で買って来た「十殿」にはDVDが付属していた。
台湾盤の発売当初に「初回限定」の様な形で付属していた物なのかどうか、
その辺はよく解らないのだが、PV映像等が収録されている程度なのかと思いきや、
2009年5月23日に自ら運営するライブハウス「Wall」にて行われたライブが、
ほぼ全編、MC等も含めて70分以上に渡って収録されている豪華なブツだった。
それも数台のカメラによるプロショット映像で映像編集もしっかり成されており、
冒頭や曲間にファンへのインタビューやメンバーのオフショットも収録され、
音の悪さを除けばこのまま販売出来るクオリティの作品だった。
十周年を記念したDVD作品「登基十年演唱会」が特別なステージだったのに対して、
今回のは常に行っているライブ特有のレアで荒々しい感じが出ていて愉しめる。
新作の曲も3曲演奏され熱い反響を呼んでいた。

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さて以降は前回の記事の後に発売された様々な物を紹介しよう。
珍品と云う言い方をするのはナニだが上記は所謂ペーパークラフトと云う奴だ。
「閃靈・紙偶公仔」と云う商品でメンバー6人分の素材が入っている。
ブラック・メタル・バンドの紙人形って・・・「誰得」の最たる物な気もするが、
現地では閃靈がこう云うファニーな受け取られ方もしていると云う事だろうか?
MediComToyさん、今度是非BE@RBRICK辺りで閃靈とコラボしてくださ~い!

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お次は「閃靈王朝」に続く書籍の第二弾「這就是 GUTS!」。
海外盤「Seediq Bale」の発売後に行われた北米及び欧州全域に渡るツアー、
そしてOzzFest等のフェス参加の日々を綴った記録である。
バンドを組んだ人間なら誰もが思うであろう一つの夢「ワールドツアー」。
それを台湾と云う、或る意味ロックの辺境地に生まれた一つのバンドが叶え、
そしてその行程で出会う様々な困難や喜びがメンバーの手に拠って綴られている。
各地のステージ写真、著名なスターや共演バンドとのオフショット、
灼熱のアメリカから零下の北欧へ、観光地での寛いだ表情も満載だ。
個人的に写真の結構が彼らのサイトに載っていた写真と同じで、
記事の幾つかも読んだ様な記憶が有りそれほど珍しさは感じなかったが、
気合の入ったDorisの前文や洒落の効いた巻末のおふざけ企画など愉しめた。
しかし中でも一番興味深いのは、「国外に出る事で自国を見直す」の言葉通りに、
様々な国を巡る事で「台湾人」としての自分を改めて見直す件だろう。
そしてバンドに興味を持って貰う事で改めて台湾の事を知って貰う契機にする事。
そう云う意識の表れが非常に意味深く感じられる1冊だ。
本書にはアルバム未収録の楽曲「Unlimited Taiwan」がCDで付いてくる。
未収録曲としては、映画「フレディVsジェイソン」の現地版主題曲である、
「極悪限戦(Satan's Horn)」のシングル発売以来だろうか?
台湾人としての自覚と覚悟がひしひしと感じられるタイトルである。

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さてその様に磐石に見えた閃靈だったが新作発表まで様々な事が有った。
世界中を巡って素晴らしいチームワークを見せ付けたバンドだったが、
台湾や韓国のバンドが長続きしない最も大きい要因の一つで有る、
「兵役」によって二胡奏者のSunungがバンドを離れる事に成った。
元々前作まではFreddyが二胡も兼任していたので問題は無いだろうが、
遥かに二胡の比重が高く成った最近の楽曲をステージで兼任するのは大変だろう。

そしてFreddyとDorisの夫婦関係の決裂も随分と騒がれた事件だった。
まあ現地の記事とか読むと未だ籍は入ったままの状態らしいが、
昨今Freddyが台湾の政治に関わり過ぎる事が原因の一つとして挙げられていた。
実際に「Free Tibet」コンサートを企画し、訪台したダライ・ラマに謁見したりと、(ちなみに日本の某誌に載ったインタビューで語られている、ダライ・ラマが閃靈の写真を見て「君は本物の悪鬼ですね」と呟いたと云うカットが冒頭の一枚である)
前から政治に関するFreddyの発言や行動は様々に報道され知られていたが、
世界を巡った事で一段と政治意識が強くなって来た、と云う感じだろうか?
それに拠ってバンドの対外的なスポークスマンにDorisが納まった訳だが、
そのせいか近頃バンド以外でもDorisの活躍が実にめざましい。

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現地の雑誌「FHM 男人幇」に於いて驚きのセクシーグラビアを飾ってから、
音楽関係以外の様々な媒体でその姿を見る様に成った。
上の雑誌は現地で発売されている「BODY」誌の表紙をDorisが飾った号の物。
(ちなみに女性の為のコスメ雑誌で、断じてエロ本等では有りません。)
こう云う本の表紙を飾る所からして、現地での彼女は色物的な扱いでは無く、
発言力の有る独立した美しい女性としてリスペクトされている感じだろうか。
実際このバンドに於いて彼女の存在感が占める割合と云うのはかなり高い訳で、
野郎はコープスペイントしても尚美しい彼女のルックスにまず眼が行くだろうし、
女子は激烈な音楽を持って世界に対峙する彼女の姿に憧れを抱くだろう。
だから、図らずもバンドの表面に立つ事に成ってしまった訳だが、
それにより閃靈が今後更なる注目を浴びる事に成るのは間違いない気がする。

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そんな彼女の新たなる挑戦が映画への出演である。
今年の3月に公開された鄭文堂監督の社会派作品「眼涙」に於いて、
主役の一人、小雯と供に働く檳榔西施の萱萱を演じている。
「檳榔西施」と云うのは台湾独特の職業の一つで、まあ檳榔売りな訳だが、
台湾島を南の方へ下って行くと衣装がどんどんスケスケに成って行くと云う、
他の店よりも多く売る為にエッチな格好がどんどんエスカレートした様な、
まあ或る種風俗産業的なお仕事に従事する御姉さん達の事を云う。
映画はそう云う底辺に居る人達から社会を描く社会派な作品だそうだが、
何せ映画の方を観ていないので個人的に何も語れない。
公開からまだ一月しか経ってないし現地で観れるだろうと思っていたのだが、
こう云う作品に有り勝ちな事だが、事の外客の入りが悪かった様で、
あっと言う間に公開館が減って正味一ヶ月位で終了してしまった・・・・
観た人の感想だと、Dorisは中々な存在感の自然な演技を見せていた様だ。
こう云う独立系の社会的な作品に出演する所も実に彼女らしい選択だろう。
かつてFreddyも「南方紀事之浮世光影」と云う地味な映画に主演していたし、
海角七号で当てた魏徳聖監督の積年の作品「賽德克巴來」に影響を受け、
「Seediq Bale」を創り上げるなど閃靈と映画界は浅からぬ縁が有る。
機会が有れば三度のコラボレーションが見てみたいものである。

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例のアイスランドの火山噴火の影響で飛行機が飛ばなくなるアクシデントの中、
閃靈はその渦中に有る英国へ短いツアーに旅立って行った。
今後彼らは如何なる方向へ進むのか・・・実に楽しみである。

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2010.05.01

寅年の台湾 其の二 「三月瘋媽祖」

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中華圏で最も信仰されている神と言えば関帝に決まっている訳だが、
関帝に迫る様な勢いで、熱心な信仰を集めている神様と言えば、
「天上聖母」と称される、元は航海安全を司る海上活動の守護神であり、
長じて現在では福得招来・願望成就と言った全般的な願いを聞き入れる女神、
大陸南方及び台湾や東南アジア全域で厚い信仰を受ける「媽祖」である。
露出の多い制服で闘う女子高生のお陰で若い衆にも知名度の高い関帝に比べ、
日本では媽祖の存在は余り知られた物ではない。
勿論海に囲まれた島国ゆえ日本にも媽祖信仰は入って来ているし、
媽祖を祭る所も有るのだが、中華圏に比べるとその扱いは甚だしく違う。

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特に台湾に於ける媽祖信仰のスケールは想像を超える大きさが有る。
台湾には「三月瘋媽祖(3月は媽祖に狂う)」と云う意味の言葉が有るそうだ。
媽祖の生誕日である旧暦の三月二十三日には媽祖廟で盛大な祝いが催され、
各地から進香団と呼ばれる巡礼団が総本山を目指しての巡行が行われる。
その最も大規模な物が台中の大甲鎮瀾宮から出発する「大甲媽祖進香」であり、
九天八夜掛けて新港の奉天宮まで十万人もの信者が進香に参加する規模を誇る。
想像してみて欲しい、十万の人間の行列である、想像を絶する光景だろう。
春節時期に出掛けられないと決った時にまず最初に考えたのが、
媽祖の生誕を祝う盛大な祭りや行列を観てみたい、と云う事だった。
ただ進香の日程はその年の元宵節に籤によって決められる事に成っていて、
情報が少ない故に上手くその時期に当るかどうかが心配だったりしたのだが、
現地で買った新聞に上記の様な記事を見付け、「よし!」と拳を握った訳である。

「大甲媽祖進香」の進香団が向かう先は嘉義にある新港の奉天宮、
そして媽祖信仰の総本山と言われているのが程近くに有る北港の朝天宮、
向かうは全土の媽祖進香団が目指す歴史有るこの二つの媽祖廟である。
かつて此処に向かうには台鉄の嘉義駅から長々とバスで行くと云う行程で、
台北から気軽に日帰りで出掛けるには結構面倒な所だったりしたのだが、
高鉄(新幹線)の嘉義駅は嘉義市内からは遠いが北港や新港にはより近くに有り、
台北から86分と云う速さも有ってかなり身近な場所に成ったと言える。
茫洋と拡がる田園地帯をタクシーで走って向かった先は新港の奉天宮だ。
長閑な風景を切り裂いて中空で炸裂する花火の爆音が奉天宮が近い事を告げる。

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新港は(北港もそうだったが)媽祖廟に向かって長い参道が延びていて、
そこに門前街が形成され、この参道が進香に大事な役割を果たしていた。
参道の入り口辺りに降り立つと、いきなり凄まじい改造車に遭遇した。
属性的には霊柩車に近いんだろうがデコトラ並のド派手さで夜も凄そうだ。

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俄かに参道の奥の方で凄まじい爆竹の音が響き大群が現われた。
奉天宮に進香し終わった集団の帰還が始まった様である。
鳴り物を先頭に進香団の文字通り旗印である巨大な刺繍旗を掲げた繍旗隊が進み、
その後を派手なネオンサインに囲まれた媽祖を乗せたデコトラが進み、
そして荷台がステージに成ったトラックが歌のお姐さんを乗せ大音声で走り去る。
何故深夜のスナックで繰り広げられそうなお姐さんの濃厚な歌唱が進香団に?
と思うだろうが、後述する様にこれも奉納の一つの形なのである。

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壮麗な奉天宮に詣でてから散乱する爆竹の欠片を掃除する人達を眺めていたが、
束の間の静寂を破る爆竹の音と供に、新たな進香団が新港の町に到着した様だ。
組み立て式の銅鑼や太鼓が搭載された車が進香団の到着を知らせる「報馬仔」。
三太子など媽祖を警護する神々に扮装した「弥勒団」「荘儀団」等も準備万端だ。
そしてその後を揃いの色の帽子を被った進香団の善男善女が行進して行く訳である。
この規模の進香団でもこれだけの迫力だと云う事は、
十万人規模の「大甲媽祖進香」だと一体どんな事に成っているのやら・・・

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新港から北港まではタクシーで大体20分位の距離だろうか、
今度は田園地帯ではなく良く有る台湾の地方都市の風景を抜けて行く。
しかし、道々同じルートで北港に向かう進香団の行列を幾組も見掛ける。
正統的に徒歩で朝天宮を目指す集団や何台ものバスやトラックを連ねる集団、
様々な進香団が北港に集結して行く様は、非常に祭り好きの血を騒がす物が有る。
朝天宮は奉天宮に比べると結構込み入った街の中に鎮座しており、
門前の賑わいも廟周辺の賑わいも更に凄く、一段とカオティックな様相であった。

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朝天宮では切れ目無しに様々な進香団が門前に現われ様々なスタイルで詣でている。
そこで少し整理してその様々なスタイルをまとめて紹介してみよう。
まず最初に媽祖に進香団の到着を告げる意味で爆竹&花火は欠かせない。
これがもう想像を絶する凄まじい爆音で、爆煙で周囲が見えなくなる程大量に鳴る。
爆竹は媽祖像の乗った神輿「神轎」の通り道にも敷き詰められその上を進んで行く。
そしてロケット花火である、いや花火と云うよりライブで使うナパームである。
凄まじい音量で炸裂すると中の金紙などが周囲にぶちまけられ、もう滅茶苦茶。
どう考えても空爆&銃撃戦と云う感じで完全に市街戦の様相を見せている。

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その中を先にも出た神々に扮装した「弥勒団」「荘儀団」等が踊り狂う。
巨大なかぶり物は媽祖の侍神である千里眼と順風耳なのかと思ったのだが、
二体ではなく三体居る進香団も有ったりでちょっと謎である。
そう云ったかぶり物の他にもコープスペイント・・・じゃなかった、
京劇の様なメイクと扮装で様々な神に扮した「八家将」と呼ばれる集団が、
武器を振り回し様々な見得を切り憑かれた様に神前で舞い踊る。

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そう云った「八家将」の中でも一層際立って凄まじいのが童乩(タンキー)である。
童乩と云うのは所謂「神懸かり」状態のシャーマンであり、
神が降りている事を示す為に自身の体を傷付ける荒行を見せ付ける。
今回観た童乩は鋭利な刃物で自らを切り付けたり、棘の付いた棒を打ち付けたり、
火の付いた大量の線香を身体に押し当てたりする荒行を見せてくれた。
童乩に付いては昔に「世界の奇祭」的な本で読んで興味をそそられた物だが、
余りのプリミティブさ故、今ではもう行われていないのではないか等と思っていた。
それが正に眼の前で、しかも何人も見れるとは思わなかった・・・・
神懸かりに対して失礼な言い方だが、見世物好きには堪えられない光景である。
近代的な台北の街と童乩が共存する台湾の奥深さが実にたまらない。

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その他にも奉天宮で見た荷台のステージで演歌を歌うお姐さんの様に、
芸能を神に奉納するケースも色々と有る。
春節時期とかに活躍する伝統的な獅子舞、同じく伝統的な軽業などがそれだ。
獅子舞は門前にちゃんと正式な舞台を設置しての堂々たる物だったし、
軽業の方も二十分近くも様々な技を披露して最後は身軽な踊りでしめていた。
他に廟内で台湾の人形劇である布袋戯の舞台が設けられていたが、
門前のスペクタクルに客の視線を持っていかれていてちょっと可哀想だった。

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進香団に付く楽隊や集団にも様々な物が有って、
折り畳み自在な巨大な喇叭で凄まじいドローン音を響かせる喇叭隊や、
陣太鼓状の物を叩きながら一糸乱れぬ御題目を聞かせる太鼓陣など聴き所も多い。

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さてそんな狂乱と耳を聾する音響の中、ふと見上げると眼の前に工事現場が。
その上で作業する連中はそんな下界の音に関せず淡々と工事を続けていた。
その日常と非日常の対比が何か不思議な感覚だった媽祖廟の夕暮れである。

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参考文献:「道教の神々と祭り」大修館書店・あじあブックス

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