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2010.10.16

「東京ポッド許可局」を読む

Pot01


非常に遅ればせながら、最近ポッドキャストを良く聴いている。
タクシーに乗った時とか、個人医院での待合室とかで耳にする位で、
普段の生活でラジオを聴く機会など殆ど無かったりしたのだが、
好きな時に繰り返し聴いて楽しめると云う利便性もあって、
試してみたら結構ハマってしまった感じだ。

聴く方にも便利であるが、配信する方にも便利なのがポッドキャストで、
簡単な機材とネット環境さえ有れば原則的に誰でも情報が配信出来る。
そう云う訳でメジャーからスポイルされてしまう様なインディな情報も、
試み次第では広く伝えて行ける面白さの有るポッドキャストな訳だが、
そう云う試みの一つの成果と言える様な面白い本が出版された。

「東京ポッド許可局」は、オフィス北野所属のマキタ・スポーツ、
サンキュー・タツオ、そしてプチ鹿島の三人が送るプログラムの書籍化である。
正直、個人的にこの三人の名前は誰一人知らなかったりしたのだが、
事務所の先輩格である水道橋博士が紹介していて興味を持ったと云う次第。
この本、平たく言えば「独特の視点で切り取られたメディア批評」と云う感じで、
特にお笑いの現場サイドから分析した芸人・芸能研究が絶妙に面白い。
博士の紹介で聴いた時は、芸能の現場では本来タブーとされていた、
「下っ端の芸人が売れている先輩芸人を批評する」と云う禁忌に、
恐れ知らずに挑戦した・・・と云う部分が強調されていたのだが、
そこまでスキャンダルな話は少なく芸能批評として上手くまとめている感じだ。
過去に配信したプログラムのリスト等を見るとヤバそうな奴も多く面白そうだが、
過去の配信は有料で聴けるらしく(通常の配信は勿論無料である)、
そちらで是非!と云う感じだろうか。

個人的に本書の中で一番面白いと云うか絶妙に腑に落ちたのが、
「矢沢永吉=ビートたけし:長渕剛=片岡鶴太郎」論である。
長渕剛の、どう考えても迷走しているとしか思えない空転振りに対し、
「かぶれやすい」と云う彼の性質を「物まね的」と解釈した部分も凄いが、
それを「矢沢永吉=ビートたけし」と云う存在と対比させて、
「片岡鶴太郎」と並べて語る部分は超絶的に巧みで膝を叩きまくりだった。
そう云う「芸風」だと言われれば、確かにそれはそれで「有り」だよな。

更に目から鱗なのが大学等で講義も行っていると言うサンキュー・タツオによる、
ネタの構成要素を分析し東西文化の違いから話芸の分岐に至る「すべらない話」論、
昨今の漫才ネタを数値化して分析すると云う労力に唖然とさせられる「手数」論、
ピン芸人の立場と「R-1グランプリ」の意味を論ずる「ピン芸人=素数」論。
この三本は実に読ませるしもっと突っ込んだ話が聞きたくなる素晴らしさだ。
特に「手数」論に於けるテクニカルな部分での分析が凄まじく、
意識的であれ無意識的であれ、芸人はここまで緻密にネタを構成しているのか!
と、素人的には驚かされる事必至の技術論が堪能できる。

対して、完璧すぎる=面白い「ドラリオン」編や「悪性エンターテイメント」論、
等は論旨に肯かされる部分は多い物の、特に独自の視点と言う感じでは無かったし、
「赤いスポーツカー」論に関しては終盤ちょっと焦点がぼやけた感じも有った。
まあ話があちこちへ飛ぶ様な三人で語るライブ感的な物も有る訳で、
焦点が絞り切れない部分もポッドキャスト的な面白さも有るんだろうとは思う。
ただ昨今の「泣ける映画」隆盛の風潮を「泣ける=ヌける」プレイに例えて、
風俗的に「涙腺プレイ」「排泄映画」と断ずる部分は実に上手いし、
個人的にも最近とみに涙腺が崩壊気味なので何かと肯く所の多い話だった。
その「涙腺プレイ」最高のテクニシャンとして紹介される武田鉄也の件も最高だ。

ちなみに本書には録り下ろしCDが付随していて三本の新ネタが収録されている。
これを聴くとやはり活字で発言を追う本書の形よりも本来の形であるべき、
三人のグダグダな語りが醸し出すグルーヴィさがキモだと言うのが良く解る。
「ハゲ」論などは多分活字にすると実にしまりの無い内容に成ると思うが、
間や合いの手、笑い声の醸し出す雰囲気が絶妙で実に面白く聴ける。
それから個人的に嬉しかったのが「とんねるず」論が聴けた事だ。
一般にメディアが芸人を語る時にその技術論的な部分に偏る傾向が有って、
それ故に技術論的に低く見られがちな「とんねるず」は、
或る意味、芸人論方向で言えば「語られざる大物」的な存在だったりするのだが、
その特異な存在をムーブメント性で語る内容にファンとして実に溜飲が下がった。
関西系のお笑いが全盛の昨今、最近の若いお笑いファンには、
凄まじい破壊力を持つとんねるずの存在の凄さが伝わっていない気がするが、
是非ともこの語りの一端からその伝説を感じ取って欲しい物だ。

と、云う訳で中々楽しませてくれるこの本だが、
関心を持った向きにはとりあえず大元のポットキャストから試してみるのも手だ。
「東京ポッド許可局」 http://www.voiceblog.jp/tokyo-pod/上のサイトから最新のポッドキャストが配信されている。

Pot02
        「東京ポッド許可局」局長と局員のみなさま。

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