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2014.07.19

BabyMetal Live At The knebworth

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BabyMetal初の欧州遠征は無事成功に終った様である、実に目出度い

YouTubeを発端とした海外での人気は周知の事実であるとは云え、
いきなり海外ツアーが発表された時は驚きよりも懸念の方が強かったのは確かで、
それが不安に変わったのは英国のSonisphereフェスへの参加の報だった。
メタル帝国の領主であるIronMaidenやMetallicaを頭に頂くフェスへの参加は、
日本のメタル者としては実に胸躍るトピックで有るのは明白なのだが、
故に「おいおい、マジかい?」と云う感覚に成るのは当然であろう。
それはロンドンでの単独公演の会場が瞬殺によるアップグレードと供に、
フェスの舞台もサブからメインステージへの変更等と云うニュースで更に加速する。

実際に、あそこまでの熱狂的な成功は想像すらしていなかったが、
昨今の欧州に於ける潜在的なヲタクカルチャーのファン層の厚さからして、
本物に飢えた現地の連中が色々と手厚く歓迎してくれる事だろうし、
ロンドン・パリ・ケルンでの単独公演に関しては有る程度の成功は想像出来た。

しかし問題はフェスである。
勿論熱狂的な連中は集結してくれるだろうが観客の大半はメタルヘッズである。
ジャンルに世界一忠実で、故に狭義なマチズモの塊の様な愛すべき連中。
間違い無くその日はエディ殿下に拝謁する為に世界中から集まった鋼鉄の僕たち。
しかも決戦の地はロックの歴史にその名を刻むネブワース。
そんな連中を何も知らない日本の15~16歳の女の子達がどう迎え撃つのか?
英国の野外フェスと言えば、朝っぱらからビールを水の様に摂取した連中が、
手前のションベンを呑んでたビールのボトルに循環させ、
それを気にくわないバンドに投げ付けると云う、実に素敵な伝統が受け継がれる。
そんな伝統でオモテナシされたひにゃあ、立ち直れなく成るんじゃないか?
とても楽観視出来ない気分で成り行きを見守っていた次第である。

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それにしても今回実感したのがネット環境の同時性だろうか。
現地に参戦した連中のツイートで緒戦のパリでの様子が知れた事以上に、
その後嵐の様にアップされ続けた現場撮影のファン映像の奔流に圧倒された。
ほんのついさっき行われたばかりのライブの断片が日本で味わえるのである。
日本では有り得ない様な状況の緩さではあるが、
これが後々世界中で更なる熱狂を生むのは間違い無い。

ネットで世界中が繋がった現在、YouTube等の動画投稿サイトこそが、
世界に向けての最強のプロモーション・ツールなのは明白な筈なのだが、
どう云う訳か日本の大手レコード会社は利用する処か下手な規制さえ試みる。
BabyMetalの成功の一因は総てのプロモ映像をYouTubeに公開し、
素晴らしい出来のワールドツアー・トレーラーを上げた事にも有る筈だ。
今回ファン撮影のグレーな映像も取り締まる事無く放置するのも、
(ライブ・ビューイングのカメラが入った公演は若干の取り締まり有った様だが)
「よく分かっている」と感心すること頻りである。

そして迎えた問題のフェス当日である。
従来ならこう云う海外の情報は現地に向った記者等の報告から得られる物だった。
それは勿論、或る種の主観であり、何らかのバイアスが掛かっている事も有る。
成功ならどの程度の成功であり、どの程度の失敗なのか個々人の判断は難しい。
しかし今回は同上の理由から個人的に内容を或る程度判断する事が出来る。
勿論、現地に参戦した連中に比べれば甚だ片手落ちな判断であろうが、
殆ど最前に近い中央、右斜め前方、左斜め中央、観客を含めて見渡せる後方、
幾つもアップされた様々な位置に居る連中の撮った映像素材によって、
フェス当日の状況が多面的に見えてくるのだ。

故に断言出来る。
凄い、これは間違いなく成功しているといえる。

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最前の連中は初っ端からカオスだ、それはもうパリやケルンの客と同様である。
しかし後方の様子見の連中は当然戸惑っている。
己の経験しているステージとは余りにかけ離れた光景に硬直しているのか?
はてまた純血主義者が自身の眼鏡に適うかどうか見極めているのか?
1曲目の「BABYMETAL DEATH」に関して感覚としては、イントロの様な物である。
本番はYouTubeで一千万回を越える再生数を誇る次曲の「ギミチョコ!」だ。
様子見の客で有っても多分耳馴染みの有るこの曲で引き込まれだすだろう。
その後に3曲目への繋ぎとして披露されるのがバックを務める神バンドのソロだ。
テクニカルな物への崇拝が強いメタル者もきっとここで感嘆の声を洩らすだろう。
録音された楽曲で云うと少々退屈のきらいも有る「Catch me if you can」だが、
こう云う単純な四つ打ちのビートはフェス等の大きな会場に於いては実に有効で、
多くの観客の脚は自然にビートを刻んでいたに違いない。
そんなビートの面白さは、これも多くの再生数を誇る次曲の「メギツネ」も同様で、
「ソイヤ、ソイヤ」「アッソレ」と云う日本人の血に染み付いている筈の、
実にエスニカルでトライバルなビートが、この祝祭空間に最高に合う。
前方は既にタコ踊り状態であり、ビートは既に脚から腰へ移動している頃だろう。
そしてBabyMetalの楽曲中最もベタにメロスピの様式美を貫いた、
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でSonisphereに止めである。
正直この曲、メイデンを観に来た様な往年のメタル者であるなら、
構成、展開、メロディ、スピード、供にドストライクな筈である。
暴れまくるツーバス、ハモりまくるツインギター、高く伸びやかな歌声、
問答無用のフルハウス、じゃなきゃ役満でツモるが如き完膚なき手だ。
こう成ると歌詞が日本語だとか、合の手が甘ったるいとか関係無いのである。
噴出するアドレナリンは上体を、そして首を動かして行き、
綺麗な軌跡を描いて曲が終了する頃には幾千もの手が掲げられる。
そして方々で自然に湧き上がる「OneMoreSong!」のコール。

ステージに物が舞い飛ぶ訳でもなく、ブーイングが沸き起こる事も無く、
静かだが、しかし確実に観客を沸かし、その脳裏に爪痕を残し、
媚びたMCも一切無く、毅然と嵐の様に去って行った日本の少女とその仲間達。
「よく解んねえけど、なんかスゲエもん観た!」
これが多分多くの観客の言葉を代弁しているコメントだろうと思う。
会場モニターに映った、前方で巻き起こるWODからの巨大なサークルピット、
その波に身を委ねた血の気の多そうな連中のなんとも楽しそうな笑顔が印象的だ。
殺伐としたモッシュではなく笑顔に溢れたモッシュと云う不思議な現象、
それがBabyMetalがこの地に起した奇妙な科学反応でもある。

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それはステージ後にフェス出演者達と撮った記念写真にも言える。
ケリー・キングだのスコット・イアンだのの四天王とのショットも良いが、
最高だったのがリヴァプールの残虐王Carcassのジェフ・ウォーカーとの写真だ。
「硫酸ドロドロ何でも溶かす」とか「人体ジグソーパズル」とか歌っている、
如何にも英国人らしい捻くれた洒落のキツい皮肉屋のデスメタルのVoが、
穏やかな優しい笑顔で少女達と談笑していると云う一枚だ。
歳とって最近丸くなって来ているらしいが、何と云う和みきったショットだろう。
こうして次々と海外に力強い庇護者を増やして行くのだろうか?
凄まじい破壊力、正にカワイイは正義。

いやそれにしても凄い、本当に良くやったとしか言えない。
想像してみて欲しい、16歳の自分が言葉の通じない数万人の前に立つ事を、
そして言葉の通じない数万人の前でステージをこなす事を。
腰が引けるだろう、言葉も出ないだろう、ションベンだってチビるだろう。
それがどうだ?Su-Metalのあの威風堂々とした佇まいと歌声は。
萎縮するどころか視線で殺すと言わんばかりに睨付けた後に、
晴れやかに破顔し高く伸びやかな歌声を大会場に轟かせる。
アンファン・テリブルとはこの事か?それは異国の連中にしたって撃ち抜かれる。
そしてそれは15歳を迎えたばかりの二人の少女も同様だ。
最近YouTubeとかでもBabyMetalを踊ってみた的な動画が投稿されているが、
それが逆説的にいかに、あの二人のダンスが凄いかの証拠に成っている。
もう圧倒的な体技のキレと表現力に見事なシンクロ率、
そしてなんと言っても最後まで笑顔を絶やさない凄まじい運動量だろう。
1度でもライブ映像を観たなら「あの小さい二人要らなくね?」
等と云う戯言がほざけなくなる筈の存在感である。
そして、これで完璧に一心同体の存在と化した神バンドの貢献度。
あの鉄壁のバンドアンサンブルが有れば世界中何処ででも闘える。
個人的にも神バンドでのステージを観て、最後のピースが納まった感じがしたが、
そんな風に感じた方々も多いのではないかと思う。
こう成るともう骨バンドに戻ることは出来ないだろう。

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さて最後に海外に於いて顕著なのが「BabyMetalはメタルなのか否か」問題。
海外では早い内にメタル専門誌等が取り上げていたからなのかも知れないが、
ネット上でその様な議論が割りと繰り拡げられているようだ。
個人的な見解で言わせて貰えば単純に彼女達は「アイドル」だと思っている。
日本が生み出した、その存在の空虚さ故にどんな物でも受け入れられ、
そしてアイドルの名の元に如何様にも変形出来る柔軟さを持った存在、
未完成な状態からの成長を記し、何時かは消えて行く儚げな芸能「アイドル」。
だからして彼女達は別にメタルが好きでグループを始めた訳では無く、
事務所の方針でやっているに過ぎない事は言うまでも無い既成事実だ。
しかし既成事実の上で始めたメタルへのオマージュは余りにも巧み過ぎで、
それを課せられた少女達は余りにも高レベルで課題をクリアしていった。
言ってみればこれは日本ならではのアイドルを使った高度な遊戯なのである。
だからこその色んなバンドへのオマージュに溢れたステージングがあり、
様々な楽曲が有り、ニヤリと笑えるTシャツのデザインが愉しめるのだ。
きっとLadyGagaの前座を務める事にも疑問を呈されたりするんだろうが、
狭義的に成り過ぎるのがメタル者の良い所でも悪い所でもある、
だからそんなにシリアスに成らずにもっと楽しめよ、と言いたい訳だ。
でもまあ「カワイイ」等と云う言葉とは無縁のごっついメタルヘッズが、
日本語の歌詞に合わせて暴れ叫んでいる様を観ていると、
結構大丈夫なのかも知れないと思わされたりもする。
本当に面白いなぁ・・・BabyMetalは。


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コメント

感想どうもでした!

投稿: 大陸浪人 | 2014.12.16 17:52

楽しめる記事でした。

投稿: | 2014.12.14 10:48

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