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2014.09.09

ラジオ発書籍行き二冊

週刊誌SPA!の紙上に於いて坪内祐三が「今はラジオを聴いている人のほうがサブカル的センスがある感じがする。」との発言をしていたが、
総じて勢いが無くなっているTVや玉石混交が著しいネット等と比べて、
確かに一周廻ってラジオの面白さが再認識されて来ている様に感じるし、
ラジオから面白い人材が輩出されて来ている様にも感じる。
と云う訳で今回はラジオ発の人材による面白かった本の紹介をば。


Radio05


まず最初はTBSラジオ「ジェーン・スーの相談は踊る」でお馴染みな、
ジェーン・スーによる「貴様いつまで女子でいるんだ問題」から。
「作詞家・コラムニスト・生粋の日本人、酸いも甘いもつまみ食いした~」
と云う番組の冒頭ナレの通りの純粋なアラフォー日本人女性なジェーンだが、
最初にそのしゃべりを聴いた時、その謎な存在と供に色々と驚かされた。
ライムスター宇多丸のタマフルの特集に登場したのが初遭遇だったが、
文字通り立て板に水と言わんばかりな喰い気味の流暢なしゃべりと、
炸裂するパンチラインの数々に圧倒されて気付けば終っていたと云う有様で、
何か世の中には凄い奴が居るんだなぁ・・・と妙に感心させられた。
以降幾度かのタマフル出演を経て、トマパイ等で本業の方の活動を知った後、
暫定的に3年にも渡るトップ5への登板でラジオでの地位を確立し、
今年4月に満を持しての土曜ゴールデンの冠番組へと歩みを進めている。

当初、暴走機関車並みの勢いに任せたしゃべりで圧倒するスタイルだった訳だが、
トップ5に於いて相方の女子アナに対し、絶妙なツッコミを見せる様になり、
それが毎週相方が変わると云う特殊なスタイルを持った「相談は踊る」に於いて、
どんな相手でも自由自在にボケてツッコむ見事なスタイルへと結実している。
様々な相談事に対してのレスポンスも実に鮮やかだわ的確で感心させられるわで、
近頃欠かさず愉しみにしている番組の一つに成った。

Radio04

彼女の著作は「私たちがプロポーズされないのには101の理由があってだな」
(通称「わたプロ」)についで今作が二冊目と成る。
前冊同様に異性としては共感すると云うより感心すると云う感じな訳だが、
ふざけた語り口の裏に潜む洞察力の深さは、毎度の事ながら抜群の切れ味だ。
本作は彼女のブログ記事の加筆修正と書き下ろしの混交に成っていて、
何本かの章に関してはそのブログで既読だったりする訳だが、
ブログで読んだ時よりも文章が何処と無く生硬な感じがして読み難かった。
彼女の文章は本来が作詞家と云う性質故なのかは解らないが、
キャッチーなパンチライン(例えば「隙がないこと岩の如し」等)がありきで、
それを中心に構成を組み立てている様な文章なので、
ウェブ上の横組みで文章を読んでいる時にはすらすらと流して読めたのだが、
縦組みで文章を追って行くと結構突っ掛かる部分が(自分には)有った。
逆にパンチラインを中心に添えていない自伝語り的な文章、
例えば「母を早くに亡くすということ」等は凄くすんなりと胸に落ちて来たから、
パンチライン中心の話は是非彼女の語り口で聴いてみたいものだ。

ブログに掲載されていた頃から個人的に一番好きなのが、
「東京生れ東京育ちが地方出身者から受ける恩恵と浴びる毒」の章。
奇しくも彼女と同じ所で生れて育っている人間としてこの話は沁みた。
彼女と同様の怨嗟と諦念(ってのは言い過ぎだが)を抱いて生きているが、
ちゃんとその問題を自身の経験に照らして相対化している所が実に素晴らしい。
恨み言を言うのは容易いがそれだけに終らせないバランス感覚に感心する次第だ。


Radio06


お次はこちらも活躍著しい「東京ポット許可局」の構成員としてお馴染み、
時事芸人としての地位を着々と築いているプチ鹿島の「教養としてのプロレス」だ。
(ポットキャストからTBSラジオの深夜番組に昇格した許可局に関して、
詳しい事は以前書籍が出た時にアップしたこちらの記事で。)
同僚のマキタスポーツの著作と同様に各所で語っている事を集成した如き内容で、
前著の「うそ社説」同様に世の中の事象を見事な見立てで切る芸風が冴えており、
しかも今回は彼が時事ネタと供に最も得意とするプロレスが見立てに成っている。

昭和プロレスの熱と毒と云うのは、夢中に成った人間に消せない刻印を刻む。
現在もプロレス及び格闘技を追い続けている人間だけでなく、
何か忌まわしい過去の様に熱狂していた昔を封印してしまった者でも、
例えばガキの頃に燃えたアニメや特撮・漫画のヒーロー達と同様に、
その思いが熾火の様に燻っていて、時に再燃したりするから面白い。

生々しい個人の人間と集団の営為その物で有ったプロレスは、
現象その物だけでなく底知れぬ剥き出しな人間の業をガキの眼前に突き付ける。
それによってガキは正と負だけで無い様々な判断と推測を迫られる。
事象の捉え方は人それぞれだが、総てが右か左かで分けられる程簡単ではない。
そこでプロレスを見続けたプチ鹿島が出した結論が「半信半疑が面白い」だ。
いかがわしさを頭から否定せず、かと言って妄信する訳でもなく、
ニュートラルな姿勢で面白がる姿勢をプロレスで学びそれが応用出来る術を説き、
そう言った「プロレス脳」的な見立てを様々に応用した方法が語られる。
勿論これは見立てであり、マキタスポーツならそれを音楽に見立てるだろうし、
サンキュータツオならアニメだったりBLに見立てたりするだろう。
その確立された屁理屈の鮮やかさが東京ポット許可局の、
ひいてはプチ鹿島の冴えた芸風でありその一つの形が表された一冊に成っている。

プチ鹿島の見立て芸はプロレスだけでなく様々な切り口を持っている。
そしてウェブ上の連載だけでも結構な数のストックが有る筈なので、
今後とも連載が溜まれば面白い切り口の書籍が上梓出来るだろう。
時事ネタが多いだけに出版を考えるとネタの鮮度的な問題は出て来るだろうが、
是非とも以前の「うそ社説」的な時事ネタまとめ本なんかも読みたい所だ。

と供に書籍で興味を持ったならばラジオにて、
是非ともその語り口の真価を味わって貰いたい物です。

Radio07
                  プチさん近影

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